アミューズエンターテインメント(東京・千代田区)の斉藤隼人社長は1989年生まれ。
専門学校卒業後に入社したゲーム会社をわずか10カ月で退社し、プロゲーマーとして食うや食わずの生活を送り、専門学校の臨時講師として教鞭をとったこともある。
2011年、21歳の時に同社を起業し、アプリゲーム開発の業績が伸びる一方で、新たに始めた店舗事業は3カ月で撤退してしまうなど、まさに波瀾万丈の半生だ。
現在では、大手企業が主要取引先にあがり、成長著しいアプリゲーム開発企業として注目されている。
斉藤社長は、ビジネスが成功に至った大きな要因を「読書」だと語る。
今回は、アミューズエンターテインメントの企業経営に大きな影響を与えた書籍4冊を紹介するとともに、斉藤社長が現在執筆中であるビジネス書籍の構想にも触れ、ビジネスと書籍の関連性について考えていきたい。
ビジネスに影響を与えた4冊
斉藤社長は、21歳で起業してから、あらゆる書籍を読み続けている。
アミューズエンターテインメント・斉藤隼人社長
「私は専門学校を卒業し、10カ月でサラリーマンを辞めました。ビジネスを成功させるには知識も経験も何もなかった。そこで、経営やビジネスに関する書籍がたくさん出版されているのだから、それらを全て読んでしまおうと思いました」と語る。
現在でも、斉藤社長は年間150~200冊を読む。多い年には600冊以上を読破するというから驚きだ。そんな斉藤社長が、ビジネスに影響を与えた書籍とはどういったものだろうか。
■『夢をかなえるゾウ』水野敬也・著(2007年・飛鳥新社)
「何かを変えたい」と日々漠然と考えていたサラリーマンの元に、ガネーシャというゾウの神様が現れる。ガネーシャが出す小さな課題をこなしていくうちに、主人公は成功をつかみ取るために成長していく――。
シリーズ累計350万部を突破し、テレビドラマやアニメ、舞台化までされたベストセラーだ。
【斉藤社長はここを読んだ!】
この本に書かれている課題を、私も実際にやってみました。 すると自分自身を変えることができました。1番はネガティブなことを言わなくなったことですかね。。発想がポジティブになったというか。本から影響をうけることがあるということが非常に衝撃的でした。 他のビジネス書と違って、ビジネス小説である部分も良かったです。架空の世界観でビジネスのエッセンスが入っている。そういった物語的な部分も面白い。堅苦しくない口語体の文体である部分も、非常に読みやすく、ビジネス書の入門書としても良かったと思います。 |
■『藤田晋の仕事学』藤田晋・著(2009年・日本経済新聞社)
サイバーエージェント・藤田晋社長初のビジネス書。
24歳で起業し、インターネット広告黎明期から常に最前線を走ってきた著者の実践的な仕事学が紹介されている。
【斉藤社長はここを読んだ!】
私が初めてスマホのアプリを作ったとき、日本にはアプリ専用の広告代理店はありませんでした。 2009年にGoogleがAdMob(アドモブ)というモバイルサイト向けの広告会社を買収すると、ネット広告界隈でスマホの広告に注目が集まりました。そして、2011年にはDeNAとサイバーエージェントが、日本初のスマホ向け広告を扱うAMoAd(アモアド)という会社を作ります。当社のスマホアプリにもサイバーエージェントから広告掲載の話がたくさん来た時期です。 そのとき、改めて「サイバーエージェントってどういう会社なのだろう」と疑問を持ち、手に取ったのがこの本です。 ネット広告業界について勉強するきっかけになった本ですが、それよりも強烈に感じたのは、「社長は皆闇を抱えている」ということです。 例えば、藤田社長が起業して間もない頃、家賃が1,000万円ほどのオフィスを借ります。金銭的に厳しいにもかかわらず、あえて退路を断って強い覚悟を持ち、ビジネスに本気で取り組む姿勢。内心は心臓が縮み上がっているのに、顔にも出さないなど、とても共感する部分が多い1冊です。 |
■『君がオヤジになる前に』堀江貴文・著 福本伸行・画(2010年・徳間書店)
38歳当時の堀江貴文氏による、著者自身の経験や世情を鑑みた、25歳から38歳までの各年代に向けた提言集。表紙を手がけた漫画家・福本伸行氏との対談も挿入されている。
【斉藤社長はここを読んだ!】
人生設計や、社員の育成、ビジネススキームの構築などについて深く考えるきっかけをくれ1冊です。この本の前提にある「1人で稼ぐことができる方法を考える」という部分にも強く共感しました。 誤解を恐れずに言えば、私は「サラリーマンは馬鹿らしい」と考えています。なぜなら、「お金を稼ぐことができる社員」が「稼ぐことができない社員」分の給料も稼いでいる。それならば、お金を稼ぐことができる社員は、フリーランスや独立した方が良いはずです。 20年前にはプログラマーという仕事が、現在ほど活躍していなかったように、今後もAIやデータサイエンティストなど、様々な職種が生まれ、仕事が変化していくでしょう。そのためのスキルを自分自身でいかに身につけるかを、深く考えました。 |
■『人を動かす』デール=カーネギー・著(初版1936年)
デール=カーネギーによる全世界で1,500万部を超える代表作。
自己啓発書の原点と呼ばれ、発売後80年以上経った今でも、様々な出版社によってリニューアル、再翻訳されるなどロングセラー作品だ。人間関係の原則や、文字通り「人を動かす」方法が実際の事例とともに紹介されている。
【斉藤社長はここを読んだ!】
独立して、社員が増えていくなかで、「なぜ社員が言うことを聞かないのか」という悩みが常にありました。 「相談を受けてアドバイスしたにもかかわらず、その通りやってくれない」といった悩みはどの経営者にも共通しているのではないでしょうか。様々な本を読んでも解決方法がありませんでした。 そこで出会ったのがカーネギーの『人を動かす』です。 この本は、様々な事例が紹介されています。例えば「工事現場でヘルメットを被らない従業員」に対して、どうすればヘルメットを被らせることができるのか。といったものです。 この本からは「人ごとに対応を変えなければならない」ことを知りました。 人は誰でも認められたいと考えています。また、圧倒的に立場が上だと感じている人の言うことは聞きます。つまり、社員が言うことを聞かないということは、関係が構築できていないということです。 社員によって自分の性格や伝え方を変えて、動かさなければなりません。 また、「本当にその人を動かさなければいけないのか」という逆説的な考えにも至りました。 |
斉藤社長が大量の書籍を読む理由、それは「ビジネスが失敗する確率を減らすため」だと語る。
「ほとんどのビジネス書は、何かに成功した人が、そのときに伝えたいことを全て書いた書籍です。それが1,000円程度で買えるのであれば、読まない理由はありません」(斉藤社長)。
斉藤社長の新しい挑戦。「ビジネス書籍の出版」
斉藤社長は、書籍の刊行を控え、鋭意執筆活動に取り組んでいる。
膨大な読書量の持ち主から上梓される渾身の1冊とは、いったいどういったものなのだろうか。
書籍の出版に至ったきっかけは、教鞭をとっていた専門学校での臨時講師職の中で生まれた。
「生徒から、毎年様々な悩みを聞くことが多く、自分の失敗から学んだ教訓などを交えて伝えることが多かった。10代や20代ならではの悩みをまとめて書籍で伝えることができれば、若者達に広く読んでもらえる思いました」(斉藤社長)。
エクセルには、若者特有の悩みとアンサーがまとめられている
事実、出版社数社からの声がかかっており、年内に原稿を完成させ、2021年2月までに出版する予定だ。
書籍のコンセプトは「若いときに知っておきたかった50のこと」(仮)。
斉藤社長が自身の人生を振り返り、若いときにやっておきたかった、やることで人生が豊かになる50のことを紹介するものだ。
・漠然と将来に不安を抱えている
・自分を変えたいのだが、どうすれば良いのか分からない
といった若い世代特有の茫然たる不安。
・他人との話が続かないのはなぜなのか
・自分と違う考えを否定してはいけない
などの普段の生活の中で気をつけるべき、他者とのコミュニケーション方法。
・自分から情報を発信することを心掛ける
・自分一人で金を稼ぐことをしてみる
これらの、ビジネスの根本となる姿勢や課題なども紹介される予定だ。
「若い世代が最初に手に取るビジネス書になれればと思っています。紹介する50のことのなかで、1つでも心に刻むことができればと思っています」と語る斉藤社長の目には、来たる大著の完成に向けて、迷いない信念が宿っている。
今、斉藤社長は様々な出版社との接点を持ち、書籍のさらなるブラッシュアップに取り組んでいる。出版関係者からの提案や、問い合わせを随時募集している。
出版関係者以外であっても、興味がある方は一度問い合わせてみてはどうだろうか。