不動産テックによって、不動産業の働き方が大きく変わる可能性がある。今回は、普段の業務を変革する不動産テックサービスをてがける「Centrl LMS」のダイヤモンドメディアと、「VR内見」のナーブを取材した。(リビンマガジン Biz編集部)
■管理会社の業務効率を計る「Centrl LMS」
ダイヤモンドメディア(東京都港区)は、管理会社の業務支援システム「Centrl LMS」を提供している。賃貸不動産管理会社は、入居者募集を仲介会社に依頼する。しかし、仲介会社が管理会社の要望通りに集客業務をしてくれているかどうかを知るのは難しい。適切な募集業務が行われていなければ、管理物件の入居率に大きな影響があるのにも関わらずだ。
(プレスリリースより)
「Centrl LMS」では、そういった仲介会社の募集業務の「見える化」や、自社物件の競合を分析することができるシステムだ。自社物件を登録すれば、物件の状況や、空きになってからの経過日数、各社ポータルサイトからの反響、内見数、申込数などを集計する。競合分析では、物件周辺の競合になる物件のスペックや、どのポータルに出稿されているかも知ることができる。
また、2018年1月には賃料査定機能が追加され、周辺の物件相場から適切とおもわれる賃料を算出できるようになた。客観性のあるデータは家賃決定などの賃貸経営戦略にも役立つと好評だ。
こうした機能を追加するために、不動産会社へのヒアリングを欠かさないという。ときには、不動産企業に出向し実務に同席することもある。
岡村雅信取締役は「不動産テックで、業界のイメージや従事者の水準を上げていきたい。そうすることで、不動産業界に優秀な人が集まり、人材不足なども解決するのではないか」と語った。
■「VR内見」で物件紹介の効率が大幅アップ
ナーブ(東京都千代田区)はVR(仮想現実)で物件内覧ができる「VR内見」を提供している。現在全国で500店舗以上が導入している。
(画像提供=ナーブ)
「VR内覧」は、部屋探しをしているお客への紹介物件のスクリーニング(ふるいわけ)において本領が発揮される。本来の店舗接客の流れは、お客の希望する物件を聞き条件にあった物件資料から、実際に内見する物件を決め案内へと移っていく。
しかし、いざ内見になると、お客は第一印象でその物件が「あり」か「なし」かを判断することが多い。入口で「なし」と判断された物件が内見中に「あり」になる可能性は低い。「VR内見」では、店舗接客時にVRによって物件を確認することができ、無駄な内見をなくすことができるのだ。
物件案内はどんなに詰め込んでも1日5件が時間的な限界だ。しかし、「VR内見」では、1物件を10~15分程度で案内できるため、効率よく物件紹介することができる。
関東で賃貸仲介をてがけるニチワ(東京都渋谷区)では、「VR内見」を導入することで、成約率が1.5倍になったと発表している(プレスリリースより)。
■最新技術をどう使うかは、不動産会社の見せ所
ダイヤモンドメディアの岡村氏、ナーブの多田英起社長に共通した言葉があった。それは、「最新技術を導入しても、それを不動産会社がどう使うかで、効果は全く異なる」ということだ。
ダイヤモンドメディアの「Centrl LMS」では、入居者募集業務の状況を蓄積し、募集方法を戦略的に打ち出すことができる。しかし、どういった方法が良いのかは、不動産会社が考えなければならない。立地や、周辺環境、物件種別などが様々な不動産においては、全てに共通した方法などないからだ。
また、ナーブの「VR内見」においても、VRを活用した効果的な提案方法を企業が模索しなければ、真の意味で活用できているといえない。VRがただの「話のタネ」に終わってしまうこともしばしばある。ナーブでは、2018年春ごろから、「VR内見」を活用した提案方法を伝える「全国勉強会」を開催予定だ。
不動産テックは、ただ単に導入して終了、というものでない。
新しいテクノロジーの効果をきちんと理解し、その効果が発揮できる環境を企業側も構築しなければいけない。