HPやポータルサイトに物件情報を登録する作業は大きな手間だ。1つの物件に対して大量の項目数があり、条件が変われば情報の更新しなければならない。賃貸、売買問わず不動産仲介会社なら、決してなくならない作業だ。実は時間や労力だけでなく、目に見えないコストがあるのをご存知だろうか。入力業務の負担を軽減する方法と合わせて紹介する。(リビンマガジン Biz編集部)
(画像=ぱくたそ)
■物件情報の登録はやはり手間?
投資物件を扱っているTRコンサルティング(東京都渋谷区)では、月に5~10件をポータルサイトに登録する。他の不動産会社に比べてかなり少ないのだが、それでも大きな手間だ。
「1件1件ずつ丁寧に登録すると、どうしても時間がかかってしまう」と語るのは、鈴木唯人代表だ。同社は社員数2人、鈴木氏も自らポータルサイトに物件情報を登録する。「入力時間10分以内を目標に登録作業をするが、どうしてもそれ以上かかってしまう」
普段意識することは少ないが、そもそもポータルサイトには入力項目数がどれぐらいあるのだろうか。某大手ポータルサイトを例に挙げると、賃貸物件で約880項目、売買物件で約700項目だった(チェック項目含む)。項目が意外と多いことが分かる。レインズは約500項目だが、これも十分に多い。
物件情報は、住所、広さや間取りといった基本的な情報以外にも、物件近隣の施設情報を登録するものもある。さらには物件写真のアップロードや、コメント入力など、コピー・ペースト作業だけで済まない項目も多いため、時間がかかってしまうのだ。
不動産売買や賃貸仲介をてがけるヨコハマ地所(横浜市港北区)では、物件登録などのバックオフィス作業専門にパート社員を3名雇っている。月に50件以上の情報登録や更新作業があるという。
「営業担当には、本業に集中してほしい」と、同社・桐澤部長代理は語る。
最近では、自社HPに登録した物件情報をポータルサイトにも変換して一括登録できる「コンバート機能」がプログラムされているHPも多い。しかし、最初の1件目の情報は手作業で入力する必要があるため、どうしても事務作業が発生してしまう。
■物件情報入力代行、会社選びの指標とは?
そういった事務作業を、入力代行企業に任せる動きもある。
HP制作・運用のアップシェア(横浜市港北区)は、海外のアウトソーシングを活用した情報入力代行やWEB運用事業を展開する。不動産の分野では、大手建売分譲会社や地方大手不動産企業など、約30社の物件登録代行業を受け持つ。
一ヶ月に入力代行する物件は、売買物件・約3,000件、賃貸物件・約6,000件とかなり多い。人手不足のおりだ、新たに代行を頼みたいという不動産会社からの問い合わせが増えているという。
こういったサービスの利用を検討した場合、まず気になるのが費用だ。
同社では、20項目・画像3枚の登録で80円前後からだ。登録項目や画像を増やすと当然費用もプラスされる。作業内容によりけりだが、相場として1件につき300円前後になることが多いという。
代表の稲井田顕章氏は、「あまりにも安い単価の入力代行会社に依頼すると、思わぬトラブルに巻き込まれかねない」と語る。
一般的に、入力情報の代行作業は「データの納品→入力代行→チェック」といった工程で進む。安い単価で入力代行を依頼してしまうと、チェック行程が省かれてしまうことが多く、金額の打ち間違えや広告の不当表示になりかねないような情報が公開されるケースもあるという。そのため、不動産会社でも再度確認作業をしなければならず、結果的に時間もコストもかかってしまうこともあるようだ。
「不動産の情報は、掲示する金額が大きく、図面の見方や私道の問題など、専門的な知識を必要するケースが多い。単なるデータ入力ではなく、きちんと専門的なノウハウのある企業に任せるべき」(稲井田氏)
不動産業界の人手不足が叫ばれている昨今、物件登録作業一つとっても人材を無駄にすることはできない。