不動産会社のうち、7割弱が後継者不在だということが帝国データバンクの調査で分かった。どの業種も後継者問題で悩んでいるが、人手不足が叫ばれている不動産業は特にその傾向が強いのではないだろうか。悩みを抱える不動産会社はどうすればいいのだろうか(リビンマガジン Biz編集部)
不動産業の69%が後継者不足
帝国データバンクが調査した企業33万4,117社のうち、全体の約3分の2にあたる66.5%が「後継者不在」と回答した。その中で、不動産業は全体の平均より高い、69%が後継者不足だという。
サービス業、建設業も不動産業と同様に高い。そういった人手不足が後継者問題に拍車をかけているのではないだろうか。また、不動産業は社長の平均年齢も高い。全業種の平均年齢は59.3歳に対し、不動産業は調査した業種のうち最も高い61.3歳となっている。不動産業の年齢を押し上げた要因は70代、80代の割合が高いからだ。世代交代が進んでいないことが見て取れる。
(画像=プレスリリースより)
後継者のいる会社
後継者がいて、同族承継をおこなう不動産会社もある。都内の老舗不動産会社では、同社で働いている息子に後を継がせるという。元々別の業界で働いていたが、数年前に後を継ぎたいと言ってきた。翌年には、宅地建物取引士の免許を取り、本格的に不動産業界へ足を踏み入れた。すでに、継がせることを内外的に告知済みだという。
これは同社が好立地にビルを所有しており、将来的にも安定的な事業が継続できるからだ。
実際には、このようなケースはまれだ。
(画像=ぱくたそ)
後継者が見つからないまま社長が退任
社長が退任する場合、以下の4つが選択肢として考えられる。
①親族に継がせる
②従業員(外部から招聘)に継がせる
③会社譲渡(M&A)をする
④廃業
後継者不足だという業界の事情を考えると、①と②の可能性は低い。残りは③と④だけになってしまう。
廃業だけはしたくないと考える会社に残された道は会社譲渡(M&A)である。しかし、中小の不動産会社の会社譲渡はなかなか難しいのが現状だ。
ファルベ不動産 木下勇人代表税理士によると、小さい会社だとM&Aしても買収側にメリットがないという。
不動産業界は参入障壁の低い業界であるため、わざわざ会社を買う必要がない。また、M&Aには企業同士の仲介をするコンサルティングが入ることが多い。しかし、会社規模が小さいとコンサルティング会社が断るケースも多い。M&A交渉は株式価値算定など煩雑な業務が多く、従業員の継続雇用や企業名(屋号)の継承などの条件で折り合わないことも、しばしばあるためだ。
「われわれ仲介者は買収金額から手数料をもらうため、小規模なディール(取引)ならば、採算があわないこともある」(都内のM&A仲介事務所幹部)
安定的な経営が見込める賃貸管理会社などを除けば、小規模事業者はM&Aをしようにも出来ないのが現状だ。
廃業になると、従業員は会社を辞めざるを得ない。情け深い社長であれば、他の会社を斡旋するケースもあるという。しかし、社長にその義務はない。
M&Aか廃業かはその会社の財務状況や経営方針で大きく変わってくる。廃業という選択肢にならないためには、後継者の育成などにいち早く取り組まなければいけない。