パナホームは9月21日、「マイクログリッドシステム(地域分散エネルギー制御システム)」事業に着手すると発表した。
※プレスリリースより
着手は10月からで、新電力で法人需要家向けサービスなどを手掛けるエナリス、建設機械・自動車などの総合リースの興銀リース、兵庫県企業庁との共同で事業を行う。
同事業は、既存の発電所からの電力に依存せず、太陽光発電などの再生可能エネルギーによるエネルギー供給源と消費施設を持つ小規模なエネルギー・ネットワークを形成するというもの。
2017年8月9日、経済産業省の「平成29年度地域の特性を活かしたエネルギーの地産地消促進事業費補助金」の採択を受け、同社が2012年から開発中の兵庫県芦屋市の環境配慮型都市「パナホームスマートシティ潮芦屋『そらしま』」のD4街区全117住戸を対象にエネルギー・ネットワークの形成が行われる。
パナホームスマートシティ潮芦屋「そらしま」開発地 ※プレスリリースより
具体的に言うと、一般送配電事業者に頼らず電力供給のために自ら敷設した送電線「自営線」を敷設することで、住戸間での双方向の電力融通が可能となり、街区全体電力の80%以上を太陽光発電で賄うというもの。非常時には系統電力が遮断された場合でも、特定回路で持続的に給電できる。
※プレスリリースより
この自営線敷設により一括受電や柔軟な電気料金設定が可能となるため、電気料金の20%削減など、住戸オーナーにとってもメリットがあり、また再生可能エネルギーの活用によりCO2削減など環境にも配慮している。
各社の役割は、同社がスマートシティ構想・開発、住宅建設・全体企画を担当し、エナリスはエネルギーマネジメントサービスを提供する。興銀リースは自営網線所有・管理、兵庫県企業庁は潮芦屋の宅地造成開発・地域連携を担当する。
マイクログリッドシステムの特長は、次の3つになる。
1. 自営線展開による低電力料金と自由な電力制御を実現
2. 蓄電池の面的制御により域内の電力の需給バランスを平準化
3. 系統電力供給停止時でも電力供給の持続が可能(特定回路)
1では、自営線の展開により、住宅地での一括受電や蓄電池の自由な制御、柔軟な電気料金の設定が可能となる。さらに、住戸間の電力融通により、再生可能エネルギーの自給率向上が可能となるうえ、電気料金の20%低減を実現する。
2では、自営線内の蓄電池の面的制御により、電力需要ピークを抑制。新電力会社(PPS)と一括受電契約を締結し、契約電力を超過する予測が出た場合には一斉に放電指令を出すなど、電力の平準化を図る。
※プレスリリースより
3では、平常時は街区全体の太陽光発電を最大限活用し、電力不足の時間帯はPPS系統電力からの再生可能エネルギー(FIT電源)の供給を受けることで、安定性を確保する。非常時に系統電力が遮断されても、域内の太陽光発電と蓄電池に貯められた電力を融通することで特定回路(冷蔵庫や照明、携帯電話の充電など)に電力供給を行い、持続的な電力供給が可能となる。
同事業は、今後、建物間での電力融通や海外の電力系統が脆弱な地帯での無停電ニーズへの対応など、海外展開のショーケースとしての役割も担っていくという。