マンションデベロッパーのフージャースホールディングスは8月22日、立命館大学と共同で、同社グループが所有する京都市指定有形文化財の長江家住宅主屋「北棟」の復原修復工事を開始したと発表した。工事の完了は2018年5月を予定している。
※プレスリリースより
これは、昭和50年代に内装が改変されたものを改変以前の姿に戻す復原修復工事で、明治から昭和期の町家の使い方や創建当時の姿を解明する記録調査を実施する。
同社では、事業を通じた文化物の承継および地域社会への貢献を念頭に置き、2015年5月に建物を取得した。京都市が推進する景観的・文化的価値を有する京町家などの歴史的建築物の保存活用を図るため、これまで継続的に京町家や祇園祭船鉾、長江家住宅に関する調査研究を行ってきた立命館大学と連携協定し、京町家を保全・活用する産学連携に取り組んできた。
そもそも長江家は代々呉服の卸を営み、敷地には新町通に面して2棟の主屋が建ち、後方に離れ座敷と化粧部屋、さらに土蔵2棟が並ぶ。屋敷は慶応4年(1868年)に主屋北棟を建築、その後、この背面や南側の敷地を買い足したと考えられ、明治4年(1907年)に主屋南棟、離れ座敷などが建築され、大正4年(1915年)に化粧部屋が建築された。
※プレスリリースより
主屋北棟は、通り土間と居室をひとつの屋根で覆う「通りにわ形式」の2階建てで、1階の内装は現代的に大きく改変されているが、かつては土間に沿って1列3室が並ぶ間取りで、柱梁などの構造体や正面玄関はほぼ当初のままとなっている。
同工事では、居室や通りにわなどの昭和後期に内装改変された部分をすべて復原する。
京都市が今年4月から標準的な規模の京町家について建築基準法を適用除外する際の技術的基準(建築審査会の包括同意基準)を運用することになったことを受けてのもので、この基準を利用する第1号事例になったという。
また、建物全体の工事では京都市指定有形文化財において2例目、京町家では初めてとなる。
改装後は、長江家住宅で開催される文化行事などに活用できる施設になる予定という。
これら工事の全工程は、立命館大学の映像学部と理工学部によって記録調査が行われ、京町家の建築構造の調査や保存活用の参考となるデータ取得を目指すという。