総合建設大手の大成建設は2016年7月、鉄筋コンクリート(RC)造の高層住宅を対象に、高強度・小断面の柱、梁部材で構築した骨組みに連層壁(建物中央低層部に複数層にわたり連続して配置されている壁)とオイルダンパーを組み合わせた新しい地震対策用制振構法「TASS-Flex FRAME」を開発した。
同社は8月7日、この「TASS-Flex FRAME」の振動実験を実施したと発表した。
同実験では、「TASS-Flex FRAME」が従来の耐震、制振構造と比べて地震の揺れを大幅に低減させ、長周期・長時間地震動に対しても優れた耐震性能を発揮することを確認したという。
そもそも同構法は、地震の力を受け流す骨組と地震エネルギーを吸収する頑強な連層壁の相乗効果で、地震の揺れを制御するというもの。
免震構造に匹敵する優れた耐震性を実現しつつ、従来よりも低コストでの建設が可能という。
近年、日本では2011年3月の東北地方太平洋沖地震や2016年4月の熊本地震など、複数回にわたって非常に大きな揺れや継続時間の長い地震が観測されている。今後についても、南海トラフ沿いの巨大地震の発生が懸念されており、東北地方太平洋沖地震を上回る規模の長周期地震動の発生が想定されている。
このように大きな揺れが繰り返し起こることで、建物にひび割れなどの損傷が蓄積し、建設当初の耐震性能が低下していく、といったことが懸念されている。
そうした想定、懸念を踏まえ、同社では繰り返しの揺れに強い、RC造高層住宅に適した地震対策用の制振構法「TASS-Flex FRAME」を昨年開発した。
※プレスリリースより
同構法は、開発時に数値解析によるシミュレーションによって、免震構造に匹敵する優れた耐震性能を有していることをすでに確認していた。
今回の実験では、30階建ての建物を想定した大型振動模型を用いて、巨大地震の揺れを再現した振動実験を行い、数値解析結果の妥当性を裏付ける結果が得られたという。
振動実験の対象構造、大型振動模型の諸元および実験結果は、下記の通り。
画像上下ともに、※プレスリリースより
同社では、RC造高層建物の居住性、安全性の向上のため、本構法を長周期・長時間地震動や巨大地震に対して有効な地震対策構法の1つとして積極的に提案してまいります、としている。