日本建築防災協会はこのほど、2000年以前に建築された木造住宅を中心に耐震性を検証する方法として「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法(略称・新耐震木造住宅検証法)」をまとめ、ホームページで公開した。

 これは国土交通省から依頼を受けたもので、1981年6月から2000年5月までに建てられた木造住宅を対象に、耐震診断よりも効率的に耐震性能を検証する方法として作成されたもの。

 検証法として、「所有者等による検証」と、これにより判断ができなかった場合に実施する「専門家による効率的な検証」などについて掲載している。

「所有者等による検証」では、所有者やリフォーム業者など、耐震診断の専門家でなくとも検証可能なチェック項目を用いて耐震性能を確認する方法だ。
 具体的には、「平面及び立面が比較的整形であること」「柱頭・柱脚接合部に接合合金が設けられていること」「壁の配置バランスが良いこと」「建物が著しく劣化していないこと」の4つのチェック項目について簡単な計算やチェックリストを用いて耐震性能を確認する。

「専門家による効率的な検証」では、「所有者等による検証」で専門家による検証が必要とされたものを対象とする。
 実際に行う検証法は、国土交通大臣の認定を受けた耐震診断方法の一般診断法や、一般診断法に準じた方法を採用する。

 一般診断法では、作業の流れとして専門家が所有者等へのヒアリングや現地調査、地盤の情報収集等を行い、得られた情報を一般診断法のプログラムなどに入力して評点・判定を算出して、現地調査時の写真や一般診断法の診断表などを整理したうえで所有者に報告する。

 一般診断法に準じた方法では、専門家の現地調査の省略を念頭に置く。
 これは、建築時の設計図面があれば壁の耐力や配置について一定の情報を得られること、接合部の状況については施工時の写真や所有者などが撮影した写真をもとに専門家が確認できること、建物の劣化状況についても所有者などが基本的なチェック項目をチェックすることである程度は判断できるためである。
 そのうえで、「図面入手ができる」「所有者などによる最低限の建物調査の結果が得られる」ことを条件に専門家の現地調査を省略するという。
 ほかにも、リフォームなどの機会で同検証法の活用をすすめている。

 こうした背景には、昨年4月14日に起こった熊本地震の影響がある。
 熊本地震の際、1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅に大きな被害がでた。
 それに加え、昨年5月から9月まで計3回行われた「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の調査報告書で、新耐震基準導入後の1981年6月から2000年5月までに建てられた木造住宅にも一定の被害があったことが確認された。
 これらの原因として、柱とはり等との接合部の接合方法が不十分であったことなどが指摘されている。

 

 調査報告書によれば、「旧耐震基準の木造建築物については、耐震化の一層の促進を図ることが必要」「消費者に向けてより高い耐震性能を確保するための選択肢を示す際には住宅性能表示制度の活用が有効」などの総括が行われていた。

 なお同協会では、専門家を対象とした講習「木造耐震改修技術者講習」を行うとしており、地方公共団体職員を対象とした講習も現在検討中という。

 
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