2024年11月27日、不動産テック協会の設立6周年記念イベントが都内で開催された。イベントでは、各部会の活動報告に加え、生成AI活用普及協会による基調講演が行われた。
協会代表理事の巻口成憲氏は、開会の挨拶として「コロナによって一気にオンライン化が加速し、さらに2023年からは生成AIがブームとなり、不動産業界自体がいろんな革新を提供しているポイントになっている」と業界の変化を語った。
基調講演では生成AI活用普及協会の事務局次長である小村亮氏が、企業における生成AI導入の現状と人材育成について講演。「生成AIの民主化により、全てのビジネスパーソンがAIを使えるようになった一方で、多くのAI初心者が生まれた」と指摘した。企業の課題として「必要なスキルを持った人材不足」「ノウハウ不足」を挙げ、AIリテラシーとスキルの両面からの人材育成が重要だと強調。特に「スキルだけに目が行きがちだが、利便性の裏側にあるリスクへの理解を深めるAIリテラシーの向上が必要」と述べた。
続く部会活動報告では、6つの部会から1年間の取り組みが報告された。不動産オープンID推進部会からは、「不動産オープンID」プロジェクトの進展が報告された。滝沢潔代表理事は「日本郵便と連携し、建物の存在確認とID付与を進める実証実験を今年の秋から冬に開始する」と説明。住所表記の統一化による業務効率化への期待を示した。
また、同部会からは、日本の住所制度の課題も指摘された。「市区町村レベルの住所管理方法が統一されておらず、中にはExcelでの管理や地図の余白に手書きで記録している自治体もある」と実態を説明。また、同一住所に複数建物が存在する「同一住所複数建物問題」など、アドレス管理における構造的な課題も明らかにされた。
ビジネスマッチング部会からは、毎月開催している交流会の実績が報告され、これまでに延べ65社が登壇、参加企業は1,000名近くに達している。2024年は銀行と不動産テックの連携など、新たなテーマでの開催も予定されている。
海外連携部会からは、世界の不動産テック市場でAI関連のサービスが全体の26%を占め最大となっているトレンドが報告された。巻口代表理事は「米国では生成AIを活用した不動産エージェントが注目を集めており、業界特化型のAIサービスが次々と登場している」と述べた。特に、物件画像の自動読み込みによる宣伝文作成や、顧客とのコミュニケーション分析による接客支援など、具体的なAI活用事例が紹介された。
業界マップ部会からは、不動産テックカオスマップの第10版の発行と、カテゴリー分類の見直しについて報告。リフォーム・リノベーション分野の再編や、不動産データベースカテゴリーの新設など、業界の変化に応じた更新が行われたことが説明された。
不動産金融部会からは、不動産クラウドファンディング市場が1年で約2倍に成長し、2000億円規模になる見込みとの報告があった。一方で、投資利回りが1年間で約1%上昇している点について、横田大造理事は「過度な広告による一般投資家への影響を懸念している」として、今後の広告規制の必要性も指摘した。
AI活用推進部会の和田浩明理事は、国内の動向について「各社がAIを自社サービスに組み込む動きは活発だが、まだ表に出てこない段階。今後さらなるリサーチと情報発信の強化が必要」と課題を指摘。具体例として、セカイハウスによるAIクローンを活用した住宅購入相談サービスなど、新しい取り組みが始まっていることを紹介した。
閉会の挨拶において、滝沢代表理事は「ようやくFAXの利用シーンが減ってきた段階。この技術進歩とのギャップがある限り、不動産テック協会の存在意義は続く」と述べ、今後も業界のデジタル化を推進していく決意を示した。