2024年7月19日、property technologies(東京都渋谷区:以下、pptc)は、不動産テックに関する研究開発組織「PropTech-Lab(プロップテック・ラボ)」の設立を発表した。同社が保有する豊富な不動産データと、大学研究機関や起業家が持つ最新の分析技術を融合させ、不動産テック分野のイノベーション創出を目指す。
「PropTech-Lab」の所長には、一橋大学の清水千弘教授が就任。清水教授は「統計分析やビッグデータ解析の応用として、 不動産データを使って、不動産の産業に対して役に立つテクノロジーとして提供していくことは、意味があること」と意気込みを語った。
pptcでは、年間3万3,000件を超える価格査定実績と、累計約6,500件のリノベーション・売買実績を有する。これらのビジネスデータとノウハウを活用し、マンションデータの整備・提供や価格査定精度の向上、「パーソナルバリュー」の可視化などに取り組む方針だ。
「パーソナルバリュー」について清水教授は、「同じマンションでも、30代の子育て世帯と50代の夫婦では価値が異なる」と説明。従来の市場価格とは別に、個人の属性や状況に応じた価値を可視化する技術の開発を進めるという。
pptc・濱中雄大社長は「誰もが、いつでも、何度でも、気軽に住み替えることができる未来を推進するため」と同ラボ設立の狙いを説明する。住宅取得のハードルの高さや、世代を超えた適切な住宅配分など、現在の不動産市場が抱える課題解決にも意欲を示した。
「PropTech-Lab」には同社のエンジニアやグループ会社の実務者に加え、大学発起業家や不動産テックに関心を持つ学生も参画する予定だ。pptcの全国の拠点を活用し、地域特有の課題にも取り組む。清水教授は「東京だけでなく、地方の空き家問題など、各地域の課題解決にもテクノロジーを活用したい」と語った。
価格査定の精度向上にも注力し、清水教授は「教師なし学習による価格予測の精度向上」を目指すと説明。従来の取引価格データに頼らない新たな手法の開発により、市場が急変する状況下でもより正確な価格予測が可能になるという。
同社は「マンション・人流データの融合による地域防災の可視化」など、不動産分野にとどまらない幅広いテーマでの研究開発も視野に入れている。オープンイノベーションを通じて不動産価値の透明性を高め、より多くの人々が質の高い住宅を手に入れられる市場の実現を目指すとしている。
清水教授は「人生100年時代において、住宅の寿命と人間の寿命のギャップが生まれている」と指摘。気候変動リスクへの対応も含め、新たな社会課題に対して産学連携で解決策を探る考えを示した。