2022年8月8日、都内の会場にて(一社)不動産テック協会主催による「不動産テックカオスマップ 最新版(第8版)発表セミナー」が開催された。
2021年7月に発表された第7版から1年、掲載サービスの変化や傾向についてをイベントの様子とともに紹介する。
不動産テックカオスマップ第8版 (クリックで拡大)
今回発表された不動産テックカオスマップ第8版の掲載サービス数は430サービスで、前回の第7版(446)から16サービスの減少となった。
同協会代表理事の巻口成憲氏は、今回のカオスマップ作成にあたり、5つの編集方針がとられたことを説明した。
・仲介業務支援、管理業務支援の再カテゴライズ
・サービス内容の変化により該当しなくなったものの削除
・運用実績が1年間なされていないもの(サービス)の削除
・メディアのみのサイトの削除
・集客、送客サイト、自社物件サイトの削除
これまでのカオスマップには業務支援系のカテゴリーとして、「仲介業務支援」と「管理業務支援」のカテゴリーがあった。しかし、仲介と管理のそれぞれに関わるサービスもあることから、「顧客対応」「契約・決済」「管理・アフター」「設計・施工」といった不動産業のビジネスプロセスに沿って細かく分けるかたちとなった。
巻口成憲氏 撮影=リビンマガジンBiz編集部
また、1年間ほど運用実績がないサービスや自社の紹介をメインとするようなサイト、情報発信を主としたメディアなども掲載対象から削除された。
現に、第7版から97もの掲載サービスが削除されることとなった(新規掲載のサービスは81)。
巻口氏の解説によると、今回のカオスマップのトレンドとして、ほとんどのカテゴリーで淘汰や撤退が始まっており、サービスの減少が始まってきていることが挙げられるという。その理由として、サービスのコモディティ化(サービス・商品が一般化することで、市場価値が低下すること)とコモディティや大手企業の参入などがあるようだ。
掲載サービス数の増減 撮影=リビンマガジンBiz編集部
一方で、今回プレイヤーやサービス数が増加したのは「VR・AR」「スペースシェア」「クラウドファンディング」の3つだった。特に、「VR・AR」「スペースシェア」カテゴリーは特に伸びた分野で、コロナ禍における非対面・非接触、在宅ワークなどの機運がテクノロジーの需要を押し上げる要因となった。
また、テックサービス同士の連携なども活発に行われている点や、アメリカでも注目が集まるテクノロジーによる不動産エージェントの支援を行う「スマートエージェント」サービスが日本でも登場してきていること、不動産事業者自らがテクノロジーを活用したBtoCサービスを開発していることなども、今回のカオスマップのトレンドとなっている。
イベント後半では、同代表理事・滝沢潔氏、理事・浅海剛氏、顧問・川戸温志氏によるパネルディスカッションが行われた。
左から川戸温志氏、浅海剛氏、滝沢潔氏 撮影=リビンマガジンBiz編集部
不動産会社内にDX推進部といった部署が立ち上がっているケースが増えており、今後本格的に組織立った取り組みが始まる可能性を語ったのは川戸氏だ。
浅海氏は、海外の不動産テック企業、特にiBuyer分野での近況から、価格査定サービスにおいてはテクノロジーと人との融合が重要であることを紹介した。
滝沢氏は、協会が取り組んでいる「不動産オープンID」の観点から、行政の住所データの持ち方における課題を解説した。
久々に開催された協会のリアルイベントイベントには、50名を超える参加者が集まり、不動産テックに対する関心の高さをうかがい知ることができた。
撮影=リビンマガジンBiz編集部