今回は、相続放棄で問題となる空き家の管理責任について解説していきたいと思います。
日本における相続では、一般的に不動産が相続財産の中で価値があり、その不動産の分け方によって相続人間でトラブルや紛争になることがあります。
しかし、そんな本来的に価値があるであろう不動産が、逆に財産的な価値を持たず、相続人が誰も受け取りたくないケースがありえます。
都市部や駅前・国道沿いにある不動産は高く評価されますが、田んぼや田舎の土地はそうではありません。
東京23区内であれば30坪程度の土地でも1億や2億で取引されることもありますが、田舎では100坪以上で数十万円にしかならないことがあります。
このような価値のない不動産を相続してしまうと、建物の取り壊し費用(木造100~300万円)だけがかかり、逆にマイナスになってしまうことになります。また、売れればまだいいですが、そもそも誰も買い手がつかないような土地を相続してしまった場合には、ただ保有して毎年の固定資産税がかかるだけで、何の特にもなりません。
だったら、はじめから相続放棄をして不動産を取得しないように考えるのが当然の話だと思います。
しかし、法律はそれを許してくれません。
民法という法律は、相続放棄をしたとしても完全にその不動産の管理責任から逃れられないようにしたのです。
その管理責任とは一体どのようなものなのでしょうか。
まずは、民法の条文をご覧下さい。
(相続放棄をした者による管理)
第940条
- 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
- 第645条、第646条、第650条第1項及び第2項並びに第918条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。
この条文の意味するところは簡単にいえば、相続放棄をしたとしても、次の相続人が管理をはじめることができるようになるまで、管理責任を負うということです。つまり、相続人全員が相続放棄をしてしまうと、その段階で次の相続人がいなくなってしまうので、管理責任だけが残ってしまうのです。(当然のことながら相続放棄をしたことで固定資産税の支払いは免れます)
相続人全員が放棄をすれば、単に空き家としての物体が残ることとなり管理責任だけが残ってしまうので、管理を行うと窓外賠償責任や刑事責任に問われる可能性があります。
これでは終局的な解決にはならないので、相続放棄を検討する前に、まず誰かが使っていかないのか、賃貸に出せないのか、売却処分できる可能性がないのかを検討していくことをお勧め致します。