全国の空き家問題を地元の学生たちが主導で取り組んでいる地域があります。今回はその中から、福岡県糸島市で九州大学の学生が主導となって行っている取り組みを紹介しましょう。
「糸島市空き家プロジェクト」とは
糸島市というのは福岡県の西部に位置する街です。非常に豊かな自然に囲まれた街で、二見ヶ浦にある夫婦岩は観光スポットとしても知られています。しかし、福岡県の中でも都市部から離れたところにあるためか、近年は空き家も目立つようになってきました。
そこで立ち上がったのが九州大学の学生でした。九州大学では2005年から工学部や理学部のキャンパスを糸島市の伊部地区へと移転しており、空き家が多く住民たちの活気が消えてしまっているというのは、学生たちにとっても大きな問題だったのです。
そしてこの状況を打破すべく立ち上げられたのが「糸島市空き家プロジェクト」でした。空き家の新たな利用方法の提案はもちろんのこと、設計から改修作業、そこに住み込む住民の募集まで、さまざまなことを学生たちが手掛けています。そして、さらに驚きなのはこれをサークル活動として行っていたということです。もちろん教授や地元企業、大学OBなど大人の力は借りていましたが、そのほとんどは学生たちの主導で行われているのです。
店舗スペースがコミュニティスペースへ
まず九州大学の学生たちが着手した空き家は、築30年の木造住宅でした。もともとは薬局兼住宅として使われていたのですが、その前年から住民がいなくなり、空き家となっていた物件です。そこまで古くなかったため大幅な改修は必要がなかったのですが、面白いのはそのアイディアでしょう。
居住スペースはそのまま九州大学の卒業生の方が住んでいらっしゃるそうなのですが、店舗として使われていたスペースは地域交流の場として使っているのです。九州大学の学生が子供に勉強を教えたり、駄菓子を販売したり、時には親たちも一緒に参加するイベントを開いたり・・・。「まちの縁側」というコンセプト通り、雰囲気が良く、たくさんの人が集まる空間になったのです。
今後は他府県の人にも糸島市の魅力を」
先述の事例以降も1年に1~2件ほどの空き家改修が行われています。築130年を誇る古民家は、九州大学の現役学生たちが指導する学習塾に、築90年を誇る長屋門は、学生や地域の人が利用できるカフェ兼子ワーキングスペースに。その実績は非常に多岐にわたります。そして何よりも実績を上げるほど、学生と地域住民との交流が深くなるというのも素敵な話ですよね。今後は学生と地域住民との交流もそうなのですが、この糸島市の素晴らしさを他府県に住んでいる方々にも伝えるというのも目標になってきます。