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画像=サカナAIホームページより

日経新聞を読んでいない君でも、エヌビディアというアメリカの半導体の会社の社名を聞いたことはあるでしょう。投資の世界のトレンドといえば、人工知能(AI)と半導体。そのトップを走るのがエヌビディアで、世界中の投資家がエヌビディアの株価に注目しています。では、そのエヌビディアも出資する、日本の注目スタートアップがあるのを知っていますか。Sakana AI(サカナAI、東京都港区)という会社です。爆速でユニコーン企業になっています。AI開発ではアメリカと中国が先端を走っていますが、日本にも世界的に注目を集める企業があるなんて、ちょっと嬉しい話ですよね。今回はこのサカナAIについて、押さえておきたいポイントを見ていきます。

サカナAIという企業は、2023年7月創業のとても新しい企業ですが、大手企業からの出資が相次ぎ、創業1年余りでユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)へと成長しました。報道によると、9月時点で評価額は推定2,000億円を超えていると見られています。ちなみに、評価額というのは、株価と発行済株式数を掛け合わせた数字です。上場企業では時価総額と言われている数字です。投資家からの評価を測るものさしのひとつと思ってもらえばいいでしょう。スタートアップ企業は成長の段階に応じて、投資家に出資を募ってお金を集めていきます。会社が成長し、また将来に向けた成長性が高まってくると、1株あたりの株価が高くなっていきます。成長期待が大きい企業は株価が高まり、評価額も膨らんでいきます。通常、株式を上場しないで10億ドル(約1,420億円)を超える規模のお金を集めるのは難しく、そんな企業は滅多いないので、未上場で評価額10億円を超える企業を「ユニコーン」と呼びます。サカナAIはかなり短期間でユニコーンになったかなり珍しい存在です。

サカナAIに出資する企業といえば、まずはアメリカの半導体大手のエヌビディア。それから2024年9月には三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループやNES、SBIグループ、第一生命など日本の大企業10社が合計約300億円を出資したことでも話題になりました。3メガバンクが同時に揃ってお金を出しているわけです。猫も杓子もサカナAI、とりあえずこの流れに乗っとけ感がなくもないですが、この会社がそれだけ多くの企業が注目し、また投資をしたくなるような会社であることは間違いありません。

ではサカナAIは何がすごいのか。AIの素人でもわかる最大のポイントは、この会社には現在世界を席巻している生成AIのトップ研究者が参加しているということです。最高経営責任者(CEO)のデイビッド・ハ氏は、香港出身の米グーグルAIの元研究者です。画像生成AIで世界的に知られている英スタビリティーAIの研究部門トップなどを経験して、サカナAIを立ち上げました。技術者では、ライオン・ジョーンズ最高技術責任者(CTO)もいます。同じく米グーグルAIの元研究者です。この人はかなり有名人で、生成AIの爆発的な普及につながった「トランスフォーマー」と呼ばれる言語処理モデルの開発に携わった人です。このトランスフォーマーというのは、ChatGPTの「T」の部分だといえば、その凄さがわかるでしょうか。そして最高執行責任者(COO)には、外務省出身で、メルカリ執行役員も歴任した伊藤錬(れん)氏が就いています。

もう一歩踏み込んで、サカナAIが注目されている理由を見てみましょう。今、世界を席巻している生成AIはChatGPTなどの登場で人々の生活やビジネスを大きく変えようとしているわけですが、その開発には莫大なお金と時間と電力が必要になります。

特に電力は社会的な課題として広く認識されるようになってきました。こうした中で、サカナAIの技術は、一言で言うと、大きくなりすぎたAI開発のコストの問題を発想の転換によって解決しようとしている企業です。大規模な開発をするのではなく、小規模な生成AIのモデルをたくさん作り、それらを組み合わせることでコストを抑えながら高性能なモデルを作るという手法をとっています。彼らはその開発手法を生物の進化に倣って「進化型アルゴリズム」と読んでいます。その背景には大きなマシンで高度な答えを導き出すのではなく、小さなものがたくさん集まり、知恵を出し合うことで問題を解決する「集合知」と言う考え方があります。魚の群れのように物事に立ち向かっていく。サカナAIという社名にはそんな思いが込められているそうです。

また、彼らは日本での生活や文化に魅力を感じて日本で起業した面もあるそうで、サカナAIが成功すれば、起業の場として日本の魅力を世界にアピールできるかもしれません。

 
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