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画像=PIXTA

日経新聞を読んでいない君でも、スキマ時間の単発バイトの需要があることは知っていますよね。もしかしたらすでにスキマバイトに勤しんでいる人もいるかもしれません。そんな単発・短時間バイトの市場を作ったスタートアップのタイミー(東京都港区)が7月に株式を公開して勢いづいています。スキマバイトのブームに乗り遅れ気味の人も、これを機に最低限の内容を押さえておきましょう。新しい働き方、稼ぎ方のヒントになるかもしれません。

タイミーは7月26日、東京証券取引所グロース市場に上場しました。新規株式公開(IPO)です。上場した当日の時価総額(株価×発行済株式数。株式市場がその会社にどれくらいの値段をつけたかの指標)は終値ベースで1,569億円でした。1,500億円超えのIPOって、なかなかの規模なんですよ。2023年に上場した企業の中で、上場時の時価総額が1,500億円を超えたのは旧日立系半導体装置メーカーのKOKUSAI ELECTRIC、楽天銀行、住信SBIネット銀行の3社だけでした。創業6年で上場のタイミーがこれらの企業と肩を並べるくらい投資家に期待されているのは、すごいことだということがわかると思います。

タイミーを率いるのは、1997年生まれ、現在27歳の小川嶺社長です。学生時代にタイミーを起業し、2018年にサービスを開始しました。売上高は2023年10月期には161億円までスピード成長し、24年10月期に売上高は275億円になる見込みです。創業まもない時期にサイバーエージェントの藤田晋社長の「藤田ファンド」の出資1号案件として資金調達したことでも知られています。

タイミーがここまで注目されているのは、短時間、単発で働く「スポットワーク」や「スキマバイト」と呼ばれる新しい働き方を世間に広めてきたためです。タイミーは企業側と働く人のマッチングをしていて、タイミーは手数料として企業がアルバイトに払う金額の30%を徴収します。働き手からは面接不要で仕事が見つかる、1時間からバイトの案件がある、そして給料が即日入金される点などが評価されています。

利用規模は、事業者が9万8,000超、働き手が700万人超。創業当初は飲食業の利用がメインだったようですが、コロナ禍に物流関係の案件を増やして成長を遂げました。現在はクライアントの44%が物流、26%が飲食、21%が小売業です。また、スポットで働いた人の中から正社員を採用することも珍しくなく、企業にとっては人材採用のルートの一つにもなっているようです。

日雇いなどの短期のアルバイトは、かつてはフリーターや学生などが対象でした。これに対して、数時間からの隙間時間で稼げるスポットワークは、会社員を含む広い層が対象になり、新しい形の働き方が広がる兆しすら見えています。例えば、デスクワークが中心の人が、体を動かす機会になるからとウーバーイーツの配送員をしていたりします。副業を解禁する企業が増えていることもあって、自分のスキルや能力を使って様々な場所で稼いだり、多様な経験を積もうとしたりする人が増えています。そうした背景もあって、利用者の層は若者だけでなく、40代以上の中高年まで広がっています。

不動産業界でも、スポットワークを利用する企業が増えています。物件の清掃や物件の撮影などを短時間のバイトで募集するサービスは複数あります。また、宅建免許を持っている人を対象にしたIT重説のお仕事もスポットワークとして認知されているようです。

働く側にとっても、企業の側にとってもメリットがある形になりつつあるスポットワーク。タイミーにとっての今後の課題の一つは、参入が相次いでいる競合との競争でしょう。この分野はメルカリやLINE、リクルートも「タウンワーク」も参入しています。競争が厳しくなれば、手数料率の引き下げにより利益率が下がる恐れもあります。現在は先行してきたタイミーが顧客企業を多く抱えていますが、どこまで優位性を維持できるか。若き社長の手腕に注目が集まっています。

 
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