いま話題の「みんなで大家さん」の経緯をわかりやすくまとめます
最低限に知っておいて欲しいニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。
みなさんこんにちは。日経新聞を読んでいなくても、不動産業者だったら「みんなで大家さん」の騒動については耳にしていると思います。何かと疑問の多い騒動について、いったい何が起きているのかをまとめました。
まず、「みんなで大家さん」とは何かから確認しましょう。「みんなで大家さん」シリーズは不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて組成された、個人投資家向けの不動産ファンドです。投資家からお金を集めて不動産を購入し、賃料収入などの運用益を分配します。商品を運営しているのは共生バンクの子会社、都市綜研インベストファンド(本社は大阪府大阪市)で、同じく共生バンクグループのみんなで大家さん販売(本社は東京都千代田区)とともに販売しています。
問題になっているのは、この投資商品「みんなで大家さん」シリーズの「シリーズ成田16号」という商品です。HPで公開されている商品概要によると、成田国際空港近くで計画されている開発計画「ゲートウェイ成田プロジェクト」の開発用地約2万㎡を対象にしていて、土地を事業者に貸した賃貸料を投資家に分配するというものです。出資金は1口100万円から。運用期間は5年、想定利回りは年7%、年6回分配されます。2023年11月に運用開始していて、すでに分配金を支払った実績もあるようです。
ゲートウェイ成田は約45.5万㎡の広大な敷地に、客席数5,000席超のアリーナと、商業施設、ホテル、国際展示場などをつくるという巨大プロジェクトです。成田国際空港は、2028年度を目途に滑走路の延伸や新設を計画していて、利用者の増加が見込まれています。その隣接地に大規模開発をするというプロジェクトで、実現すれば巨大な施設になることは間違いありません。HPにはド派手なイメージ図も公開されていてなかなかインパクトがあります。
さて、この商品が色々な問題を巻き起こしているのですが、報道されている問題としては、東京都と大阪府が販売に待ったをかけました。6月17日に東京都がみんなで大家さん販売に対して、大阪府は都市綜研インベストファンドに対して、それぞれ不特法違反で30日間の業務停止を命じたのです。
業務停止の理由は主に二つあります。一つは、成田市の開発許可を受けていない土地を対象不動産の一部として組み入れていたこと。もう一つは、5月19日に共生バンクグループが成田の開発プロジェクトについて一部計画の変更を発表していたのですが、この変更が「シリーズ成田16号」の資産性にどんな影響を及ぼすかについて十分な説明を果たさなかったということです。
この発表を受けて、投資家から「地位の譲渡」(投資商品の解約)の希望が多発したようで、都市綜研インベストファンドなどは解約の一時停止に追い込まれていました。なお、解約手続きは7月29日から再開するそうです。
ここまでの話では、みんなで大家さんの販売会社は、投資家に対する説明が不十分で、それを行政が指摘したという構図に捉えられます。しかし実は、行政処分の以前からこの投資商品については様々な問題を指摘する声が上がっていました。事前に指摘されていた内容からすると行政処分の内容はちょっとヌルいくらいです。
中でも突っ込んだ動画を作成したのが、収益不動産情報サイトの「楽待」でした。これに対して5月、都市綜研インベストファンドとみんなで大家さん販売が楽待の運営会社を刑事告訴したと発表。楽街は動画をすでに削除されていますが、成田の開発プロジェクトに遅れが生じていること、投資家に十分に説明されていないことなど複数の問題点を指摘していたようです。
楽待に限らず、みんなで大家さんの「シリーズ成田16号」については、開発がかなり遅れているのではないかとの指摘が複数あって、「ほとんど工事が進んでいない」という声も出てきています。YouTubeには現地を突撃取材する動画が多数上がっています。
また、土地の取得費が高すぎるとの指摘もあります。このファンドは最終的に土地を売却して、その売却でもってファンド終了時に投資家に元本を返すスキームです。売却価格が想定を下回れば、最終的に投資家に損失が生じることになります。
都市綜研インベストファンドは2012年、2013年にも行政処分を受けています。投資家の信頼を得るためには、しっかりと投資商品の説明をすることが求められます。