日経平均株価がバブル期の最高値を更新。要因や今後も株価は上がるのかを考察
日経平均を読んでいない君でも、日経平均株価がバブル最高値を抜いた話題は知ってますよね。2024年2月25日、日経平均株価の終値は3万9,098円となり、バブル期の1989年12月29日につけた最高値の3万8915円を上回りました。34年2カ月ぶりの高値更新です。株高に沸く市場からは「日経平均4万円」の声も聞こえてきますが、さてこの上げ相場は続くでしょうか。ポイントを押さえていきたいと思います。
34年ぶりの「バブル超え」の背景の1つは、昨今の世界的な株高です。2023年は、アメリカや欧州に加え、インドをはじめとした新興国などで株高が進みました。ここ数年、物価の上昇を受けて中央銀行による金利引き上げが続いてきましたが、それがひと段落し、利下げへの期待が高まっています。再度、市場にお金があふれるかもしれない。そうした期待感もあって、世界的な株高が進み、その中で日本株も買われています。
もっと目先の話では、生成AI(人工知能)に関連した企業の好決算が“祭り”状態になっているという事情もあります。生成AIブームの中で、アメリカのエヌビディアや台湾のTSMCなど半導体関連の企業が業績を大きく伸ばし、さらに今後もっと伸びるという強気の予測を出したことで、株価が沸騰しています。
日本は円安が進んでいるので、外国人投資家が日本の株式を買いやすくなっているという事情もあります。円安で割安感がありますし、仮に今後株価が上がらなくても、円高が進めば、為替差益を手にすることができます。また、米中の対立が深刻化する中で、投資家は中国企業への投資を回避する動きがあり、日本はその恩恵を受けているという見方もあります。
別の角度の要因も見てみましょう。この10年間で、日本企業が投資家の期待に応えるための改革を進めてきた成果が現れつつある、という見方もあるんです。2013年に政府が閣議決定した「日本再興戦略」の流れを受けて、2015年に日本の企業統治(コーポレートガバナンス)改革が始まりました。
この動きはずっと続いていて、今年1月には、東証が企業のPBR(株価純資産倍率)対策について情報を開示する取り組みも始まっています。自社株買いを含む株主還元の強化や、社外取締役の選任などガバナンスの強化、そして東証が重視している「PBR1倍割れ企業問題」などが示すところはすなわち、資本効率の良い経営をする企業を増やして外国人投資家のマネーを引き込んでいきましょうという動きです。
お金を効率的に使って稼ぎ、投資家に還元していく企業が評価されて株価も上がる、そういう循環です。経営効率を客観的に把握しやすいPBRやROEなどの指標が広く知られたこともあって、企業経営者側の意識も、投資家側の企業選びの目線も、この10年くらいで大きく変わってきました。日経新聞や経済メディアでも、資本効率の良い経営に切り替えて、業績が上がり、株価も上がった企業の記事をよく目にします。事実、外国人投資家はすごく増えてきましたし、企業の指標上の経営効率は上がってきています。こうした地道な企業改革が、株価を押し上げた一因と見られています。
では、日本の株価は、「バブル高値」を超えてどこまで上昇するでしょうか。
バブル期と現在のPER(株価収益率)を比べると、バブル期の日本企業のPERは60倍を超えていたけれど、現在は10倍台だからまだ過熱感はないという見方もあります。PERは株価が純利益の何倍まで買われているかの指標で、倍率が高いほど、割高ということになります。つまり、PERの指標を使ってみてみると、バブル期と現在は、約3万9000円ということで日経平均株価は同じくらいだけれど、バブル期の方が企業の稼いだ利益の規模に対して株価が割高だったことを示しています。この数字だけをみると、現在は企業の稼ぐ力に対してまだまだ株価が上がる余地があるように見えます。
指標上はまだ割安感が残りますが、それでも株高が続くかどうかは分かりません。一つ言えることは、30年以上も株価が高値を更新しない市場に投資をするのは、投資家にとってとても辛いことだということです。
今年から新NISAで投資を始めて、積立投資をしている人も多いと思います。積立投資の多くは、特定の指数に連動した投資信託を毎月買っていくというものですよね。
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オルカンだったり、S&P500だったり、もしかしたら日経225の投信を積み立てている人もいるでしょう。この積立投資で資産を作る条件は、長期的にみたとき、その指数が上がる(株価が上がる)ということです。日経平均の前回高値から投資を始めた場合、下落相場で積み立てを続けた人は、資産が目減りし続けたことになります。それでも下落局面で積立を続けると、単位あたりの購入金額が下がって、上昇局面で大きく資産が増えます。
しかし日経平均の場合、本格的な上昇局面に転じるまで実に20年くらいかかりました。この間に投資を辞めてしまった人は、損失が膨らんだだけということになります。積立投資は長期間続ければ大きな資産になると思いがちですが、いつ始めるかは実は重要です。株高に沸く時には、焦って投資を始めずに様子を見るのも一つの選択肢だと思います。