日経新聞を読まない君たちでも、「新NISA」という言葉は聞いたことがありますよね。テレビやウェブでもたくさん紹介されて話題になっているので、気になっている人も多そうです。もしかしたら、今年から資産運用を始めたという人もいるかもしれませんね。でも、どうお得かよくわからない、何を買えばいいのかわからないという人も多そうです。ということで今回は新NISAについて基本を押さえていきましょう。

画像=PIXTA

NISA(少額投資非課税制度)は、一言でいうと、株式や投資信託を運用する上で税金がお得になる制度のことです。通常、株式の運用から得た配当や売却益などの利益には約20%の税金がかかりますが、NISAでは税金が免除されます。株式投資をしている人はよくわかると思うのですが、2割の税負担がなくなるのはとても大きいですよね。だから本来、NISAはお得な制度なはずなのですが、2014年に始まった従来のNISA(ここで旧NISAと表現します)は対象になる金額が小さかったこともあって、広く普及するところまではいきませんでした。
これに対して、2024年1月開始の新NISAでは、非課税の対象金額が大きくなるなど、大幅に使い勝手が向上。資産運用をするならば新NISAを使わない手はない、というくらいの制度改正で、大きな話題になっています。

具体的にどうお得なのか、見ていきましょう。まず入口として、NISAの簡単な仕組みを確認しておきます。新NISAを始めるにはまず、証券会社で新NISAの口座を開設します。ネットから申し込みができるので、調べてみてください。最近は取引手数料無料のネット証券が人気です。

NISAには、投資信託を毎月一定金額で購入する、積立投資のための枠(旧NISAでは「つみたてNISA」、新NISAでは「つみたて投資枠」)と、個別株やETF(上場投資信託)などを売買ができる枠(旧NISAでは「一般NISA」、新NISAでは「成長投資枠」)があります。積立投資は、特定の銘柄を毎月一定の金額ずつ買っていく投資の手法で、長期の資産形成の基本といわれています。個人の資産形成のための制度なので、わざわざ「つみたて投資枠」があるわけです。

新NISAの大きな特徴のひとつは、対象になる金額の大幅な拡大です。年間投資上限額(1月1日から12月31日までに投資できる上限金額)が、旧NISAはつみたてNISAが40万円、一般NISAが120万円だったものが、新NISAはつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円になりました。合計で年間360万円を非課税で投資できるわけです。

もうひとつの特徴は、非課税保有限度額の拡大です。非課税保有限度額は、生涯を通じて非課税で保有できる限度額。新NISAでは1,800万円と設定されています。1,800万円というのは、時価ではなく、株や投信を買った時の簿価(買付金額)です。非課税保有期間も、旧NISAは5年間だったが、新NISAは無制限になりました。旧NISAは金額、期間ともに一時的、時限的な制度でしたが、新NISAは生涯を通じて使える制度になりました。

ここまでみてきたように、新NISAになって非課税で投資できる金額が大きく拡大したわけですが、投資初心者にとって悩ましいのは、「何を買うか」でしょう。ここでは文字数の制限もあるので、ひとつだけ、つみたて投資枠を考える時に話題の「オルカン」についてちょっとだけ説明します。

「つみたて投資枠」は、積立投資のための制度です。積立投資は特定の銘柄を毎月一定額で買っていく投資手法で、証券会社のNISA口座で「この銘柄を毎月⚫︎万円買う」と設定したら、あとは自動的に毎月同じ銘柄を購入していきます。

このつみたて投資枠で人気を博しているのが、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称「オルカン」)という投資信託です。日本を含む全世界の株式の指数に連動するように運用される商品で、いわば、「世界全体に投資する」投資商品です。信託報酬の低さをわかりやすさとで人気を集めていて、メディアやSNSで「つみたて投資枠はオルカン一本で」みたいな話をよく見かけます。この問題については、いずれまた別の機会に詳しく解説してしましょう。

長寿化によって「人生100年時代」となり、従来よりも各個人による老後への備えが求められる時代になりました。2019年には「老後2,000万円問題」も話題になりましたが、多くの場合、年金だけでは老後の生活費を賄えません。現役時代からの備え、つまり資産形成をしておくことが必要で、そのために国も、確定拠出年金(企業型と個人型のiDeCoがあります)やNISAなどの制度を作ってきました。一部の税収を諦めてでも、老後への備えを支援しようとしている、そう捉えることができます。

一方で、この政策には2,000兆円といわれる家計の金融資産を株式市場に投資させるための政策という側面もあります。みんなで株を買えば株価が上がるわけで、そうすれば企業はそのお金を元に新たな事業へと投資ができ、経済の活性化が期待できます。日本の株式を持つ外国人投資家も歓迎するでしょう。

新NISAに飛びつくことに不安を感じる人もいると思います。そういう人は、株式投資のリスクとリターンの基本を知り、自分はどれだけのリスクを取れるのか、それは銀行と比べてどのくらいのリスクか、そういったことを知るところから検討を始めてみてもいいかもしれません。

 
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