電通という会社をわかりやすく説明しておきます

画像=写真AC

こんにちは。日経新聞を読んでいなくても、東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約をめぐる汚職事件で次々と逮捕者が出ているのは知っていますよね。紳士服大手、AOKIホールディングスの青木拡憲前会長、そして出版大手、KADOKAWAの角川歴彦会長と大手企業の経営者が次々と逮捕されて、連日報じられています。

この「五輪利権」をめぐる一連の汚職事件の中心にいるのが、電通元専務で大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者です。五輪といえば電通ですよね。でも、電通ってどんな会社、いまいちつかみどころがなくてわかりません。ということで、今回は大手広告代理店の電通について、簡単にみていきましょう。

電通の創業は1901年、新聞記者の光永星郎という人物が創業しました。当時は、広告代理店事業と通信事業の両方を手がけていたようです。大正デモクラシーの時代を経て、新聞部数が大きく伸びていく中で、電通も大きく成長します。1936年には通信事業を分離し、広告専業の会社になりました。

戦後、電通は4代目社長の吉田秀雄氏のもと、戦後のラジオ・テレビなどメディアの普及の波に乗ってビジネスを拡大しました。吉田社長といえば、電通社員の行動規範である「鬼十則」でも有名ですよね。「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……」「周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる」など、なかなか壮絶な内容で、当時の電通の雰囲気が偲ばれます。

比較的最近の経営者では、電通の「天皇」と呼ばれた9代目社長の成田豊氏の名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。電通は成田社長時代の2001年に株式を公開、翌2002年には汐留に大きな本社ビルが完成しました。

さて、そんな電通は現在、売上総利益9765億円、調整後営業利益1790億円(2021年度)という巨大企業になっています。電通の事業範囲はかなり広いです。いわゆる広告代理店事業では、クライアントからマーケティン事業を請け負ったり、CMを作ったり、プロモーションを企画したりとなんでもやります。広告事業では特にテレビCMに強いのが特徴です。国や政治に関連した仕事もあります。有名なのは、選挙の時の政党の広報ですよね。特に電通と自民党の関係は長く、戦後まもない頃からから自民党の広報にかかわってきたと言われています。そして、電通の事業の大きな柱のひとつがイベント事業です。中でも大きなボリュームを持っているのが、スポーツイベント。オリンピックはその象徴的な事業です。

電通は1964年の東京五輪からオリンピックに関わってきましたが、五輪が本格的にビジネスの場になったのは、1984年のロサンゼルス五輪から。「商業化」した最初の五輪となったロス五輪で、電通は日本においてスポンサーを集める権利から、ライセンス管理、アニメ化、入場券取り扱いなどを独占的に扱う権利を獲得しました。スポンサーを1業種1社に限定して独占的に契約する方式もこの頃に確立しています。企業としては五輪ブランドは大きな商機になるのでスポンサー枠を獲得したい。希望する企業が多ければ競争原理が働くのでスポンサー料が釣り上がり、莫大なスポンサー収入を得られる、という仕組みです。ロス五輪でのビジネスを取り仕切り、電通のスポーツビジネスの礎を築いたのは服部庸一氏(元常務)でした。当時、「もうかる五輪仕掛人」として新聞に紹介されています。そしてこの服部氏の部下の一人として、電通のスポーツビジネスを手がけてきたのが、今、世間を騒がせている高橋容疑者です。

2020年東京五輪はスポンサーの1業種1社を緩和して、多くの企業とスポンサー契約を結んだことで、多額のスポンサー料収入を得ることに成功しました。しかし、その選考過程が不透明だったことが汚職を生むことになったのではないかとみられています。電通が育ててきたビジネスを、電通OBが悪用したことになるわけですが、影響はどこまで広がるでしょうか。

 
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