宗教と政治の問題でなぜこんなに大騒ぎになっているのか
宗教と政治の問題でなぜこんなに大騒ぎになっているのか
「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。 (リビンマガジンBiz編集部)
画像=写真AC
みなさんこんにちは。日経新聞を読まなくても、安倍晋三元首相への銃撃事件を機に、統一教会の問題が指摘され続けていることには気づいていますよね。政治家、特に自民党の政治家は、世間がどん引きするくらいの長きにわたり、統一教会と繋がりを持ってきたようです。そのことを示す情報が次々に出てきています。しかし話が複雑になってわかりにくくなり、そろそろついて行けなくなった人も多いのでは。ということでこの話題に乗り遅れた人に向けて、あらためて統一教会の話題の基本的なところをまとめたいと思います。
統一教会は1954年に韓国で文鮮明氏によって設立された、キリスト教の宗教団体です。現在の名称は、世界統一平和家庭連合。メディアでは「旧統一教会」と表記されることが多いですが、ここでは統一教会という書き方で統一したいと思います。ご存知の通り、韓国に本部があり、日本にも多数の信者を抱え、アメリカを中心に世界中に信者がいます。
アラフォー以上の人は、1990年代にメディアを賑わせたのを覚えていると思います。1992年に歌手・女優の桜田淳子さんが統一教会の合同結婚式で結婚しました。たくさんの初対面の花嫁と花婿が広い会場に集合する写真はあまりにも異様で、インパクトは絶大でした。しかし、同じ頃に作家でタレントの飯干景子さんが父の説得に応じて統一教会を脱会、桜田さんと同じ92年に合同結婚式で結婚した元新体操選手の山崎浩子さんも脱会して離婚に至りました。家族の粘り強い説得によって洗脳状態を解き、脱会へと導くエピソードが繰り返し報道されました。
統一教会から我が子を取り戻そうとする動き自体は、教団の設立から間もない1960年代からあったようです。90年代に芸能人が入信・脱会したことで、この問題がさらに広く社会に認知されることになりました。そして現在は、「宗教2世」と呼ばれる信者の子どもの問題が知られるようになってきています。
統一教会がこれだけ問題視される大きな理由の一つに、献金や霊感商法など、信者から強力にお金を集め続けていることがあります。教団側の限度を超えた献金の要求に応え続けた結果、離婚や家庭崩壊へと至ってしまった信者の例が数多くあります。山上容疑者の母親は約1億円を献金したとも言われていますが、一般家庭がそれだけのお金を献金すれば、経済的に破綻する可能性が大きいですよね。親が多額の献金を繰り返し、経済的に困窮し、進学を諦めたり、家族崩壊の中で辛い思いをしたことを告発する宗教2世が増えています。
なぜ統一教会がこれだけ厳しく信者からお金を取り立てるのかというと、それは統一教会にとって、日本は資金調達の場だからです。統一教会の全体的な動きをみていくと、日本で集めたお金を海外、特にアメリカに持ち込み、アメリカでの事業展開に使われていることがわかります。そのうちの一つが、アメリカにある食品の卸売商社、トゥルー・ワールド・フーズ。アメリカとカナダの数千軒のレストランに魚を卸していて、アメリカにおける寿司ブームの影の立役者、なんて解説をする人もいます。日本でお金を集めて、アメリカで寿司ブームを起こしてお金を儲けるという循環を作り出しているわけです。
さて、そもそもなぜ、統一教会と政治家や政党が関係を持つと問題があるのでしょうか。政治との距離が近い創価学会や幸福の科学とはどう違うのか、疑問に思う人もいると思います。ひとことでいえば、統一教会については、反社会性が著しく高いこの団体をなぜ、取り締まりの対象にしなかったのかが問われています。
政治が宗教活動を取り締まったら、「信教の自由」を侵害することにならないの? そんな素朴な疑問を持つ人も多いと思います。何を信じるのか、何にお金を使うのかは本人の自由です。でも、社会的に問題がある活動をしている場合は、それが宗教団体だったとしても厳しく取り締まる国もあります。その一つがフランスで、「カルト規制法」と呼ばれる法律があります。法外な献金の要求、公共の秩序を乱すこと、身体に危害を加えるなど、具体的な10の基準を定め、団体の活動が基準に抵触した場合は、解散や活動禁止などを命じるという法律です。宗教的な教えの内容は関係なく、活動の内容がやばかったら取り締まりの対象にしますよという考え方です。この法律がつくられた背景には、統一教会を含む宗教団体の活動がフランスで問題になったことがありました。こうした事情から、いわゆるカルト教団を厳しく取り締まる国では、統一教会は無理な献金集めができなくなっています。
というわけで、反社会的な活動をする宗教団体を野放しにしていいのかどうか、なぜ政治家はそれと真剣に向きあわないのかという、そう言うことが問われているのに、そもそも政治家自信が反社会的な活動があることが長期にわたって指摘されてきた統一教会とズブズブだったことに、呆れる人がたくさんいるということです。日本でもフランスなどを参考にカルト規制法についても議論が始まっているようです。日本の政治家は反社会的な宗教団体と手を切ることができるでしょうか。