円安とその影響についてわかりやすく解説
円安とその影響についてわかりやすく解説
画像=Pixabay
みなさんこんにちは。日経を読んでいない君でも、最近なんだか円安だなと感じる場面が増えてきていませんか。実は、2021年にだいぶ円安が進みまして、今はかなり円が安い水準にあるんです。不動産業は為替の影響を受けにくいので、皆さんのビジネスがすぐに影響を受けるわけではありませんが、円安が続けば、輸入品の価格上昇を通じて広く私たちの生活に影響を及ぼします。というわけで今回は、円安とその影響についてみていきましょう。
2022年1月22日現在、ドル円は1ドル=113~115円くらいの水準にあります。2017年頃の円安と同じくらいの水準で、つまり5年ぶりの円安ということになります。
日本では、円がドルに対して安い状態にある方が、輸出産業にとって有利だと考えられてきました。平たく言いますと、円高よりも円安の状態の方が、海外での販売価格が安くなって、価格競争力が上がるからです。だから、円安=日本経済に良い状態と考えられる傾向があり、円安になると株式市場も盛り上がります。円安と株高はセットで進行しやすいんです。
円安と株高がセットで進む。これはまさに、10年前の2012年に誕生した安倍政権が始めたアベノミクスで起きたことでした。安倍氏は12年末に就任すると、大規模金融緩和と財政政策や成長政策を組み合わせたアベノミクスをぶちあげました。アベノミクスによって結果的に円安が進み、株式市場もそれを歓迎したわけです。この時期、1ドル=77円くらいから、2015年には一時期、1ドル=123円まで円安が進みました。
しかし、安倍政権後半では円高の傾向が続き、コロナが蔓延し、菅政権になって、2020年末には1ドル=103円くらいという、歴史的に見ればどちらかというと円高の状態にきていました。これが1年間で、一気に円安が進みました。2021年の1年間で、12%近く円安が進んだ(円が安くなった)ことになります。
さて、日本では円安が喜ばれる傾向があるわけですが、目下進行中の円安も歓迎ムードかというと、そうでもないんです。モノの値上げがじわじわと起きていることへの警戒心が募ってきているからです。コロナ禍によってモノの流通が混乱してモノ不足が商事、結果的に価格が上昇したり、と世界的に色々なモノの値上がりが進んでいます。また、近年の異常気象によって、値上げを余儀なくされている農産物や製品もあります。日本では、少子高齢化に伴う人手不足により、人件費が上昇しているという要素も加わります。
値上がりの中でも警戒されるのが、原油価格の上昇です。原油価格の世界的な指標であるWTI原油先物価格は、1バレル=85ドルで、上昇を続けています。日本は国内に資源がない国なので、海外からの輸入に頼らざるを得ません。
さらに加えての、円安です。円安になると、輸入品の価格が上昇します。1ドルの製品が、1ドル=50円の時は50円で買えたけれど、1ドル=100円になると従来の2倍の100円を出さないと手に入らなくなってしまうわけです。通貨安というのは、その通貨の価値が他の通貨に対して安くなる(モノを買う力が弱くなる)ということなので、円安が進むと輸入品の値段が上がるのは当たり前のことではあります。
エネルギーはあらゆる経済活動に必要なものです。原油価格の上昇と円安が同時進行しているということは、あらゆる経済活動に必要なコストが以前に比べて高くつくようになっていいるということです。
ここまで見てきたように、円安には、輸出を後押しする効果と、輸入品の値上げ、すなわち輸入する時の負担が大きくなるという問題があり、良い面・悪い面の両方があります。さらに問題になるのは、円安による物価上昇と景気後退が同時進行で進む場合です。不景気と物価上昇が同時進行することを「スタグフレーション」といいます。モノの価格が上がるのに、景気が悪い状態も続く。それは悲劇です。
昨年秋頃から、この円安に伴うスタグフレーションの可能性を指摘する声が出てきました。モノの価格が上がる、すなわち物価が上昇すること自体は、悪い話ばかりではありません。経済活動が活発になり、給料も上がって、という良い循環の中での物価上昇は、成長の証でもあるからです。しかし、経済が成長せず、給料も上がらない中で物価だけ上昇してしまうと、生活者の負担が非常に大きくなります。
では、日本の足元の経済成長はどんな感じでしょうか。日本の経済成長率、すなわちGDP(国内総生産)の2020年度の前年比成長率(実質)はマイナス3.9%。四半期ベースでは2021年4-6月が0.5%、7-9月がマイナス0.9%です。足元はまだまだ厳しく、経済成長へとつながる雰囲気はまだ出てきていません。
為替というのは、色々な理由で決まるので、先行きを見るのが非常に難しいものです。中長期的には、その国の経済力や物価、金利などの水準に収斂(しゅうれん)していくとみられていますが、短期的には政治情勢やさまざまなニュース、そして市場の思惑に左右されます。専門家の予想もあまり役に立たないのが為替の難しいところです。問題は、経済成長ができるかどうか。以前にもまして環境が悪くなってきていますが、どうにかしてみんなで成長の軌道に乗れるように知恵を出していくしかありません。