いよいよ2022年から始まる日本の大問題
いよいよ2022年から始まる日本の大問題
画像=Pixabay
2022年が始まりましたね。今年も、日経新聞を読まない皆さんに向けて経済について軽く語っていきますのでよろしくおねがいします。
さて、2022年最初の話題は、「2022年問題」(2022年危機といわれることもあります)です。「●●年問題」は毎年あるような気がしますが、今年のそれは、これからの日本社会が本格的に変わっていくそのはじまりの時期に突入したことを示すもので、私たちの生活にもすごく大きな影響があります。それってどういうことなのか、みていきましょう。
2022年は、1947(昭和22)年~1949(昭和24)年に生まれた「団塊(だんかい)の世代」が75歳以上の後期高齢者入りし始めるということを指します。一言で言うと、社会が負担する社会位保障費の負担がぐんと大きくなり始めるということです。これが「2022年問題(危機)」です。
団塊の世代は、第二次世界大戦が終わった後の「第1次ベビーブーム」といわれた時代に生まれた人々です。だいたい800万人くらいいます。日本の人口ピラミッドを見てもらうととってもわかりやすいのですが、この世代と、彼らが親になり始めた「第2次ベビーブーム」(昭和46~49年)の人口が突出して多いんです。人数の多い彼らは、戦後の日本の社会において、さまざまな局面で存在感を発揮してきました。そしてこれから、団塊の世代は日本の高齢者の中心的な存在になろうとしています。
この団塊の世代が後期高齢者になり始めるのが2022年。そして全員が75歳以上になるのが、2025年です。いずれも「2022年危機」「2025年問題」などと言われています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2025年には、日本の総人口約1億2200万人のうち、75歳以上の後期高齢者は2180万人になるそうです。実に、人口の17.8%が75歳以上ということになります。
後期高齢者が増えると、私たちにどんな影響があるのでしょうか。少子高齢化の影響は前からあるじゃんと言われればそうですが、現役世代のサラリーマンの負担額が今年からさらに増えます、と言われると深刻さがわかってもらえるでしょうか。
最もインパクトが大きいのは、医療や介護の負担増加です。厚生労働省によると、高齢者1人当たりの年間平均医療費は、75歳未満は22万2000円ですが、75歳以上の後期高齢者は93万9000円になります。歳をとると医療費がかさみますし、本人の自己負担は75歳になると1割に減るので、社会で負担する分が増えるということです。
高齢者の医療費は、社会保険料の負担として、みなさんが支えることになります。
みなさん、自分がどれだけ社会保障のお金を負担しているか、ご存知ですが。サラリーマンの場合は、給与から天引きされるかたちで社会保険料を支払っています。社会保険とは、厚生年金、健康保険、介護保険(40歳から)、雇用保険、労災保険です。年収に占める負担の割合(これを保険料率といいます)は年収額によって異なるのですが、年収500万円でだいたい15%くらいといわれています。
高齢化の進展によって後期高齢者の医療費が急増し、保険料率が大幅に引き上げられることになると見られています。
引き上げが予想されるのは健康保険です。健康保険組合連合会によると、健康保険の料率は2007年は7.3%でしたが、右肩上がりで上がり続けて、2019年には9.2%になりました。これが2022年になると9.8%に跳ね上がる見通しなんです。
ちなみに、40歳以上になると介護保険も払うようになりますが、高齢化によって当然、介護保険の負担も大きくなります。同じく健康保険組合連合会にいよると、介護保険の両率は2010年は1.1%でしたが、2019は1.5%に、そして2022年には2.0%になるとの見通しを出しています。給料から天引きされる社会保険の金額が大きくなると言うことです。
少ない現役世代でたくさんの高齢者を支える、社会保障の逆ピラミッド構造の問題はこれまでも指摘されてきました。日本の医療や介護を支える社会保障制度は、「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」といわれ、若い人がお金を払って、それを高齢者が使うという形でやってきました。しかし、現役世代だって貧困だったり子育てだったり、いろいろとお金は必要です。さらに、高齢化が進めば今後、さらに若い人々の負担が重くなります。
さすがにこれはまずいというか、現役世代としては負担が重すぎますよね。そこで、今年から、高齢者自身の負担を引き上げる方向で調整が入ることになりました。ある程度お金を持っている高齢者は医療費の自己負担が引き上げるということです。75歳以上の後期高齢者になると医療費の自己負担が1割で済むのですが、2022年10月以降は、一定の所得(本人の年収が200万円以上など)がある人は自己負担が2割に引き上げられます。
この対策がどこまでの効果があるのか、そして団塊の世代すべてが後期高齢者になる2025年以降にどこまで負担が拡大するのか、まだよくわからない面があります。ただ、このままけば、現役世代の負担が大きくなるのは避けられないでしょう。社会保険の問題は、複雑で難しい印象があるので深く考える機会が少ないのですが、実は自分自身の生活や人生に直結しています。そして、あなたの親や祖父母の生活にも直結しています。長生きはしてほしいけれど、自分の生活も豊かにしたい。この難しい問題に、一人一人が向き合って、知恵を絞らなければならないんです。