2021年の経済ニュースをわかりやすく振り返ります
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みなさんこんにちは。早いものでもう2021年も終わりですね。今回は経済ニュースを中心に2021年を振り返りたいと思います。
コロナの影響が続く中で始まった2021年は、年初から海外で政治的な混乱が続きました。
アメリカでは1月にバイデン大統領が誕生しましたが、就任式の直前に、トランプ前大統領の支持者らが連邦議会に乱入し、一次占拠する騒動がありました。大統領選から新大統領就任までの一連の騒動は、アメリカの分断の広がりと根深さを強く印象付けることになりました。ちなみに、バイデン大統領は、目玉の政策として10年で200兆円を投じる経済対策をぶち上げましたが、2021年中に法案を成立させることができませんでした。2022年に持ち越しとなるようです。
2月にはミャンマーで軍クーデターが起きました。現在も軍事政権が続いています。
3月には正栄汽船(愛媛県今治市)が所有し、台湾の船会社エバーグリーンが運航する「Ever Given」がスエズ運河で座礁事故を起こし、世界の開運に影響をもたらしました。このトラブルの賠償については7月に和解をしていますが、金額などの内容は非公表です。
4月になると、今度は中国で動きがありました。アリババなど中国のIT大手に対する規制を強化し始めました。中国政府がアリババに独占禁止法違反で約3000億円の罰金を科したことは、この動きを象徴する出来事になりました。国による「IT企業叩き」はその後も続き、テンセントなどもゲーム事業に規制をかけられるなどしています。新興IT企業は中国経済の成長のシンボル的存在でもあったわけですが、そうして成長したIT企業のトップが表舞台から去る動きが続いています。アリババのジャック・マー氏は1年以上、表立った活動をしていませんし、今年11月には「TikTok」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者がCEOを退任しました。
習近平政権は昨年、「共同富裕」というスローガンを打ち出し、貧富の差の是正に向けた取り組みを進めています。この共同富裕の取り組みを進める中で、IT企業への風当たりが強くなってきたという背景もあります。中国といえば、7月ごろからは不動産大手、恒大集団の経営危機が世界的に注目されるようになります。価格の高騰が続いてきた不動産の抑制策が引き金になり、放漫経営を続けてきた恒大集団の資金繰りが危うくなったというわけです。綱渡りの資金繰りは年末も続いていて、デフォルト(債務不履行)の瀬戸際が続いています。
中国に関連した動きでは、TPP(環太平洋経済連携協定)をめぐる地政学にも注目したいところ。今年9月、中国がTPPに正式に加入申請しました。TPPはもともと、アメリカと日本が中心になって進めてきたもので、中国に対抗する自由貿易圏をつくるという色合いが強かったのですが、そこに中国が飛び込んでくるというニュースには多いに驚きました。しかしTPPはさらに複雑になります。中国の発表の7日後には、中国と対立する台湾も加入に名乗りを上げたのです。そして12月には韓国も。TPPの重要性が一気に高まっています。
さて、世界的なテーマといえば、中国が共同富裕で格差是正に取り組んでいますが、秋に発足した岸田政権が掲げる「成長と分配」もまた、格差の是正を目指すものです。そしてもう一つ、世界の大きなテーマとして、産業界で巨大なうねりが出てきているのが「脱炭素」です。
脱炭素を受けて大きく動いている産業の一つが自動車業界です。今年に入ってから米アップルが自動車事業に参入するとの報道が増えています。自動運転のEV(電気自動車)を数年以内に発売すると見られています。日本ではまだ馴染みの薄いEVですが、アメリカではイーロン・マスク率いるテスラが急成長していますし、中国では国を挙げてEVへのシフトを進めており、急速に参入企業が増えています。日本のトヨタ自動車はEVに搭載する電池などについて、2030年までに1兆5000億円を投じることを発表しました。EVへのシフトは自動車の作り方、産業構造そのものを超えるインパクトを持っています。このEVシフトが日本の産業にどんな影響をもたらすのか、よく見ていく必要があるでしょう。
2021年はコロナ禍からの回復が少しずつ見えてきた年でもあります。コロナによって寸断されていたサプライチェーンが復活する中、モノの生産や物流に混乱が生じる場面もありました。大きな影響を及ぼしているものの一つが、半導体です。半導体の供給不足は、自動車生産などにも影響を及ぼしています。原油などエネルギー価格の上昇を受けて、あらゆる商品の価格が値上がりしています。企業間で取引するモノの物価(企業物価)は2021年に入ってから上昇を続けています。一部の食品などはすでに値上げしていますが、まだ、最終製品の価格には転嫁されていない製品もたくさんあるので、今後もじわじわと値上げの波が続く可能性があります。