みずほ銀行は、なぜこんなにもトラブルが多いのかを、わかりやすく解説
みずほ銀行はなぜ、こんなにもトラブルが多いのか
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みなさんこんにちは。日経新聞を読んでいなくても、みずほ銀行がシステム障害で大変な状況にあることはご存知ですよね。ツイッターなどで金融庁が出した「激おこ」の業務改善命令の話題を目にした人もいるかもしれません。
業務改善命令では、「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」など、子どもを叱るような強い文言が目を引きます。メガバンクがこんな風に怒られるのは前代未聞です。この問題、いったいなんでこんなにこじれてしまったのでしょうか。今回はみずほフィナンシャルグループ(FG)とみずほ銀行のシステム問題についてみていきます。
さて問題のシステム障害ですが、みずほでは、今年の2~9月にかけて8件のシステム障害が発生しています。ATMの停止や窓口の停止、ATMに通帳が吸い込まれてしまう、外国為替取引で送金遅延など、お客さんが直接巻き込まれる障害が起きています。これに対して金融庁は激おこなわけです。
しかも、みずほのシステム障害は今に始まったことではありません。2002年、2011年にも大規模なシステム障害を起こしています。システム障害を理由とした金融庁の業務改善命令も、実は10年ぶり3回目なんです。
なぜこんなことになってしまったのか。ことの発端は2000年の統合までさかのぼります。2000年に、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が合併してみずほFGができました。3つの銀行が一つになるので、システムも一緒にしなくちゃねということで、合併を発表した1999年からシステム統合に向けて動き始めます。しかし、これがうまくいきませんでした。
通常、銀行が統合する場合は、どちらか一つの銀行のシステムに「片寄せ」して統合します。三井住友銀行の場合、住友銀行系のシステムを残して、三井銀行を統合しました。みずほも当初は旧第一勧業銀行のシステムに片寄せして統合する方針でしたが、のちにこれを撤回。3つの銀行のシステムを残したまま、連携させて運用する道を選びます。しかし、3つのバラバラなシステムを併存させて間を繋ぐという運用が難しかったようで、みずほ銀行は2002年4月の発足初日からATM障害が発生してしまいました。これが最初の大規模システム障害です。
銀行には複数のシステムがあるのですが、障害が起きたシステムは、銀行のシステムの中でも、「勘定系システム」と呼ばれる、口座や融資の残高や利息計算などを行う、銀行の根幹を支えるシステムです。お客の口座残高などに関わるシステムのため、障害が発生すると、ATMなどに支障が出てしまいます。
みずほは2011年にも大きなシステム障害を起こし、3銀行をつないでシステムを成立させる方法に見切りをつけました。そして新システム「MINORI」をつくって、統合しようといことになったのです。MINORIは開発に4500億円、8年という月日を費やし、2019年7月にようやく完成しました。多くのエンジニアが長期にわたって参加し、「いつ終わるのかわからない」くらい壮大なシステムだったので、着工から100年以上にわたり建設が続いているスペインの建物になぞらえて、「IT業界のサグラダファミリア」なんて言われることもあります。
さて、そのみずほのサグラダファミリアである「MINORI」は2019年に完成したわけですが、話はここで終わりません。このMINORIが相次いでシステム障害を起こすことになったのです。そして今年、金融庁に大目玉をくらうことになりました。
メガバンクを支える巨大システムの開発が容易ではないことは想像できます。しかし、三菱UFJや三井住友など金融再編の中でどこの銀行も統合を繰り返して現在の形になってきて、その中でなんとかシステムを安定稼働させてきたわけです。これがなぜ、みずほにはできないのか。
一つにはこの20年前の3銀行の統合から根本的な問題が始まっていたと見る向きがあります。みずほは1999年に統合を決めた頃から、「対等の精神」で3行が一緒になることをうたってきました。3つの銀行が対等な立場で合併することは、一見、美しく見えます。他の銀行の合併では、三菱UFJは三菱銀行がUFJ銀行を吸収するような形で進めてきたんです。つまり、通常は最も強い銀行が統合のリーダーシップをとっていくのが普通ということです。これはシステムだけに限らず、人事などすべての従業員の中で社内に「序列」ができることを意味します。これは中で働く人にとってはなかなかキツい状態で、実際にその人間関係はさわやかではありません。
しかし、みずほはそこを「対等の精神」でやろうとした。その象徴がシステムで、古い3行のシステムを残したまま、外付けのシステムを作って連携させる方式を取ろうとしたわけです。結局、新しく作ったMINORIも、複雑さを併せ持つ巨大システムで、みずほはそれを管理しきれていないことに問題の根本的な原因があるといわれています。ITに対する理解の欠如もありますが、強いリーダーシップで一つにまとめきることができなかった弊害がシステムにも反映されているわけです。
ふつうの会社であれば、経営統合の失敗という言葉で済まされるわけですが、メガバンクは社会を支える金融のインフラを担う存在です。今年、金融庁が事実上介入することになったわけですが、みずほはシステム問題にどう決着をつけるのでしょうか。