もうすぐ総選挙だけど、そもそも選挙のやり方は正しいのか
みなさんこんにちは。日経新聞を読まない君でも、2021年10月31日に衆議院議員総選挙の投開票があることは、さすがに知っていますよね。19日に公示されました。小栗旬さんやローラさんなど芸能人が投票をよびかける動画「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」(本文上部)が話題ですが、みなさんぜひ、投票に行って下さい。
さて今回は、目の前の選挙の内容というよりも、選挙制度について考えてみたいと思います。
日本の衆議院選挙は、小選挙区制と比例代表制を組み合わせた小選挙区比例代表並立制で行われています。
前回、投票所に行ったときのことを思い出して下さい。投票所では、小選挙区の投票用紙と、比例代表の投票用紙、の2枚に記入します。小選挙区選挙の用紙には候補者名を、比例代表選挙の用紙には政党名を記入します。
小選挙区選挙は、超単純かすると、「人」(候補者)を選ぶ選挙です。全国を289の選挙区に分けて、各選挙区で最も多く表を得た1人が当選します。
もう一つの比例代表選挙は、「政党」を選ぶ選挙。全国11ブロック、定数は176人です。まず、政党名を書いて投票すると、獲得した票の割合(得票率)に応じて政党に議席が配分されます。政党はブロックごとにあらかじめ候補者の名簿を用意していて、衆議院選挙の場合は、名簿の順位が高い人から当選が決まっていく仕組みです。小選挙区と比例代表に重複して立候補することもできるので、小選挙区で落選した後、比例で復活当選する人もいます。
こんな具合に、小選挙区と比例代表とを組み合わせて、あわせて465人の衆議院議員を選びます。任期は4年です。
選挙ってただですら込み入っていて難しい印象ですが、なぜ、小選挙区と比例代表を組み合わせているのでしょうか。これはそれぞれの足りない部分を補い合うためと説明されます。小選挙区は比較的選挙区が狭いので、きめの細かい選挙運動ができるといわれています。しかし、各選挙区で1人しか当選しないので、候補者は多数派の意見を聞きがちです。しかも、1人しか当選しないので、当選者意外の候補に投じられた死票(落選した人に投じられた票)が多くなり、多様な民意が政治に反映されにくいという問題が指摘されています。
反対に、比例代表は、票の割合から議席を配分していくので、死票が少ないと言われています。少数派も議席を確保しやすくなりますが、少数政党が乱立しやすくなり、国会の運営が大変になるのがメリットだと言われています。
テキストで書くといまいちピンと来ないかもしれませんが、現在の衆議院選挙の仕組みをまとめると、多数派の声を反映しやすい小選挙区制と、少数派の意見も議席に反映する比例代表制、このふたつを組み合わせているんですね。
選挙制度は一つではなく、世界的に見てもいろいろな制度があります。そして、時代によっても変わってきました。日本も、現在の小選挙区比例代表並立制になったのは1996年の衆院選からです。
戦後、日本の衆議院選挙はずっと、議員定数は3~5人の中選挙区制でした。これが選挙制度の改革を経て小選挙区比例代表並立制になったわけです。小選挙区制が採用された背景には、1つの選挙区に党の公認候補は1人だけということもあり、選挙のコストが安く済んで、金権政治になりにくいと考えられたことがあります。そしてなによりも、政権交代可能な二大政党制を作ることが目標とされていました。
多数派の意見を反映しやすい小選挙区制は、大きな力を持つ少数の政党に集約していきやすいと考えられたようですが、実際には政権交代こそ実現したものの、二大政党制と呼べる状況にはなっていません。むしろ、「自民一強」「安倍一強」と呼ばれるような、権力の集中が起きているとの指摘もあります。
そもそも、日本に二大政党制が適しているのか、二大政党制にしたら民意がより反映されやすくなるのか、疑問が残る部分もあります。また、選挙とカネの問題についても、2019年の参院選広島選挙区の買収事件など、わりと最近もお金に関する問題は起きています。
選挙制度って、実は政治情勢を形づくるキホンの部分でもあるんですよね。だから、今の状況に歪みがあるとするならば、制度から見直す。そういう視点で選挙を見てみると、今までとは違う見方ができるかもしれません。