|2020年のニュースを振り返ろうか

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は、2020年のニュースを振り返ります。 (リビンマガジンBiz編集部)

画像=Pixabay

2020年も残りあと半月。今年はなんといっても、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の話題で一色でした。そしてその中で生まれた変化が、2021年へとつながっていきます。世界の価値観が変わった2020年に何が起きたのか。今年、日経新聞を読まなかった君たちのために、ざっとおさらいします。

2020年は新型コロナとともに明けました。前年の12月頃、中国の湖北省武漢市で新型コロナが発生し、2020年2月になると、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で集団感染が発生するなど、日本にも本格的にコロナが上陸しました。4月7日に緊急事態宣言が発出されて、経済活動が大きく停滞しはじめます。世界的にも各都市でロックダウンが始まり、人の移動が制限され、出入国を厳しく取り締まる、事実上の「鎖国」状態に入りました。これが4月から5月にかけての動きです。全世帯に国から「アベノマスク」が配布されたのもこの頃ですね。

ちなみに、コロナ騒ぎですっかりかき消されましたが、民法の一部が改正されて、2020年4月から施行されています。「瑕疵(かし)」が「契約不適合責任」へと変わるなど、不動産業に大きな影響をもたらす改正が行われました。

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5月には、アメリカで白人警察官が黒人男性のジョージ・フロイドさんを死亡させた事件をきっかけに、黒人差別に対する抗議デモが全米に拡大。「Black Lives Matter」運動へと発展しました。

6月に緊急事態宣言が解除されると、日本政府はさまざまな産業の支援策を打ち出します。特に、人の移動が制限されたことで深刻な打撃を受けた、飲食業や観光業が支援の対象になりました。7月からは「Go To トラベルキャンペーン」、10月からは「Go To Eatキャンペーン」がそれぞれ始まりました。コロナ禍による打撃は、さまざまな産業に及んでいます。不動産業も、現場への案内や契約の機会が制限され、またテナントの撤退などによる損失も発生していたわけで、大きな痛手を負ったわけです。そうした中で、特定の産業のみを集中的に支援することに対しては批判が噴出しました。

8月になると安倍晋三前首相が辞任を表明、7年8カ月におよぶ長期政権が終わりを迎えました。そして9月には菅義偉氏が引き継ぐ形で新たな政権が発足しました。

菅政権の政策は基本的に安倍政権の路線を踏襲していますが、強いて特徴を挙げると、一つはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。「脱ハンコ」などはその象徴で、これまで紙ベースでアナログの処理をしてきた行政手続きのデジタル化を進めることを打ち出し、2021年9月には「デジタル庁」を創設する意向を示しています。

もう一つは、「脱炭素」です。「2050年に温室効果ガス排出ゼロ」を目指すと宣言し、2030年半ばまでにガソリン車の販売を停止するとみられています。欧州に比べて遅れていた日本の環境対応がようやく進みはじめ、企業もそれに合わせて事業戦略の見直しを迫られています。

この脱炭素の動きは、急ごしらえ感があり、産業界はやや困惑気味ですが、米国での政権交代のタイミングと重なっていることもあり、世界的なトレンドになる可能性が出てきています。

2020年11月の米国大統領選挙では、米国を二分する大接戦の末、現職の共和党・トランプ大統領を、民主党のバイデン候補が破りました。バイデン次期大統領は、トランプ大統領が脱退を表明した地球温暖化防止の国際条約「パリ協定」への復帰を宣言するなど、環境政策を推進していく意向を示しています。トランプ政権期間中に停滞してきた環境問題への対応が、これからの4年間は大きく前進する可能性が高く、日本の企業ももはや無視できなくなりつつあります。

コロナの騒動で見落としがちですが、実は、投資市場ではESG(環境・社会・企業統治)を重視する動きが急速に拡大しています。政治家や企業よりも、投資家の方が環境問題に熱心と言えるかもしれません。生命保険大手の第一生命や日本生命は、全運用資産について、評価軸にESGを加える意向を発表しています。また、11月には、欧州の投資家連合が三菱商事など12社に対して、ベトナムで進める石炭火力発電所の建設計画から撤退することを要求しています。

さて、不動産業への影響という点では、今年はリモートワークの普及など「働き方」が大きく変わったことも、ここでおさらいしておきましょう。

4月の緊急事態宣言を受けて、多くの企業がなし崩しにリモートワークや在宅勤務を取り入れることになりました。もともと、柔軟な働き方への対応を求める「働き方改革」の流れの中で、リモートワークへの対応は注目されていましたが、コロナによってこの流れが一気に加速しました。特にIT企業はこの動きへの対応が早く、IT企業が集積する渋谷のオフィス市場では、空室率が上昇・賃料が下落する現象も見られました。

緊急事態宣言解除後は徐々にオフィス勤務が戻りつつありますが、感染が収束した後も、「コロナ前」と同じには戻らないと見る人が大半を占めています。そうなると、企業は都心部に大きなオフィスを構える必然性がなくなります。住宅地に近い場所にサテライトオフィスを設けたり、シェアオフィスを活用するなど、働く場所を分散する動きが進むと見られています。

オフィスのかたちや地域が変われば、住まいも変わります。もちろん、商業店舗のニーズにも変化があるでしょう。この大きな流れをどうチャンスに変えていくのか。2021年は、不動産業にとって非常に大きな変化が訪れようとしています。

 
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