新型コロナ自粛のいまこそ長期資産運用について知っておこう
「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。新型コロナ問題で自粛のいまこそ学びたいのが、長期運用についてです。(リビンマガジンBiz編集部)
みなさんこんにちは。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急事態宣言が発令される中での生活ですが、体調はどうですか。
不動産業者さんも、自宅での作業が増えているのではないでしょうか。コロナ禍がもたらしたリモートワークの推進は、住まいにも、オフィスにも、大きな変化をもたらすことになりそうです。
さてこのコロナ時代に、金融市場でも大きな変化が起きているのをご存知でしょうか。個人の証券口座の開設数が急増しているんです。
楽天証券は、2020年3月の新規口座開設数が約16万4000件で、2月、3月と月間の新規口座開設数が歴代業界最多となったそうです。かつてない勢いで口座開設が増えているということです。ネット証券大手のSBI証券も、2月に口座数が500万口座を超えたと発表しました。
コロナウイルスの感染が欧米諸国に広がったことを受けて、2月下旬以降、株価が大幅に下落しました。年初に2万3000円を超えていた日経平均株価は、3月半ばには年初から29%安の1万7000円を割り込む場面もありました。4月に入り2万円を回復する勢いですが、企業業績の先行き不透明感が強まっているので、しばらく厳しい局面が続きそうです。
そんな、株価がすごく下がった局面で、口座開設の動きが相次ぎました。「安値の今こそ買い時」というたくましい人がたくさんいるということもありますが、実際には、長期の資産運用に関心はあったけれど、時間がなくて投資を始める準備を先送りしてきた人たちが生活に余裕ができて口座を開設するケースが多いようです。
今、投資を始める人の多くは、やみくもに個別企業の株式を売り買いするよりも、投資信託を買う人が多いようです。それも、毎月、定額で投資信託を買っていく「積み立て投資」による長期運用を考えるのが一般的です。実際、この積み立て投資に対応した、税制優遇制度「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」の口座開設が増えています。
「年金2000万円問題」を機に、若い人たちも長期運用に関心を持つようになってきました。将来の年金は不安、銀行預金では金利が低すぎて資産が増えない、そんな人たちが、一歩踏み出して投資を始めているというわけです。
せっかくなので、ごく簡単に、積み立て投資について考えてみましょう。一般的には、毎月、定額で投資信託を購入していく「ドルコスト平均法」が基本と言われています。いくらを投資に回すかは自分で決めます。給料の額が増えたら、投資に回す額も増やしていきます。証券会社の口座で、毎月、同じ投資信託を、同じ金額だけ買っていく積み立て投資のプログラムを設定すれば、あとは自動で毎月投資ができます。
ドルコスト平均法のポイントは、投資信託の値段(基準価額といいます)が上がっても、下がっても、毎月同じ金額を買っていくということです。コロナ相場のように、株価が大暴落する局面では、株式で運用する投信の値段もたいてい、下がります。ちょっと前から投資を始めていた人たちの中には、今回のコロナショックで、これまでに自分が投じた投資元本を運用総額が下回る、恐ろしい局面を経験した人もいたでしょう。そういう局面でも、とにかく、毎月コツコツ、一定額を買っていきます。これが案外、難しい。暴落の局面で驚いて売却してしまう人も多いものです。
でも、下落局面こそ、毎月コツコツ投資にとってはおいしい局面なんです。毎月同じ金額で買い付けをする場合、投資信託の値段が下がっている局面ほど、たくさんの口数を買うことができるからです。コツコツと安い金額でたくさん買っていけば、値段が上昇した時に、運用総額もぼかーんと膨らむことになります。
もちろん、株式の投資信託の場合、株価が下がれば運用総額も下がります。お金を必要としているまさにその時に株価暴落が起きた場合などは、かなり悲惨です。株なんか買わないで、銀行預金にしておけばよかった、ということになりかねません。
だから、どんな資産に投資するのか、ということがとても大切になります。ハイリスク・ハイリターンの株式、株式よりはリスクもリターンも低めな先進国の国債など、いろいろな資産を組み合わせる。それは、自分の人生でリスクをどれだけ引き受けることができるか、という問題でもあります。
この金融資産による運用ポートフォリオの中に、不動産をどう位置づけるか。これからの不動産業者は、こういう広い意味での資産運用と不動産をうまく結びつけるトークが必要になるはずです。