世界経済、コロナの「最悪シナリオ」
「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は…知らない人は会社来ないで!という新型コロナウイルスについてです。(リビンマガジンBiz編集部)
みなさんこんにちは。元気に過ごしていますか。みなさんの会社にも、新型コロナウイルスの影響がでてきているでしょうか。
今回は、世界経済を大きく揺るがす新型コロナの影響について、考えていきます。
まず、景気うんぬんを語るときに、よく登場する国内総生産(GDP)について簡単に説明しておきます。GDPとは、1つの国で1年間に生産されるモノやサービスの合計で、いわば、その国の経済の規模を図るものさしです。新聞やテレビで言う「経済成長率」というのは、このGDPが1年間でどれくらい増えたかの割合を指すのが一般的です。
そして通常、GDP成長率として扱われるのは、インフレ率(物価上昇率)を差し引いた「実質」の値であることも、今回、ついでに覚えてください。
さて、経済の専門家は早くも、コロナが世界経済の成長見通しにどれくらいの影響をもたらすかを試算しています。
国際機関の一つの経済協力開発機構(OECD)は3月2日、2020年の世界経済の実質GDP成長率を、2019年11月発表の年2.9%から、0.5ポイント引き下げて2.4%になりそうだという予測を発表しました。これ、けっこう大幅な下方修正です。
OECDはコロナの「最悪シナリオ」も提示しています。新型コロナの感染者が世界中で大幅に増えてしまった場合、2020年の経済成長率は1.5%まで下がるとしています。
日本はというと、2020年は0.4ポイント引き下げて0.2%。ほんのちょっとしか成長しません。中国は、0.8ポイント下方修正で4.9%。日本よりもずっと高い数字ですが、中国にとっては1990年以来の低水準ということで、世界の工場であり、消費を牽引(けんいん)する存在の中国の成長が大きく落ち込むことは、日本やアメリカなど他の国にとっても大きな痛手になります。
コロナが経済に与える影響はそれくらい大きいことは、すでにみなさんも肌で感じていると思います。人の移動が止まり、観光客が減ったことでインバウンド関連の需要は激減、コンサートやアミューズメント施設なども軒並み閉鎖され、消費は大きく落ち込んでいます。マスク、トイレットペーパー、消毒薬、冷凍食品などなどは売れ行きが好調ですが、全体としては大きなマイナスで、すでに「コロナ倒産」も出てきました。
不動産業も他人事ではあありません。特に商業施設を運営しているデベロッパーにとっては、不安が大きいでしょう。施設内で患者が出た場合、どこまで店舗を閉鎖するのか。賃料はどうなるのか。細かすぎてメディアで報じられる機会は少ないですが、そういった問題がすでに現場では生じています。
さて、こんな感じで「コロナ不況」の足音が近づいてきているわけですが、この不況ってコロナのせいだけでしょうか?少なくとも日本にとっては、コロナがなくとも、もともと厳し状況だったの、ご存知ですか。
この原稿が公開される3月9日頃には、日本の2019年10月から12月のGDP成長率の改定値が公開されているはずです。すでに公開されている速報値は、10月から12月がマイナス1.6%、年率でマイナス6.3%でした。2019年10月の消費税率の引き上げの影響に加えて、企業が工場やビルを建てたりなどの設備投資をする動きが鈍っているそうで、実は景気はかなり悪い状態にあります。
東日本大震災があった2020年1月から3月のGDP成長率はマイナス1.4%でした。マイナス1.6%という数字は、すでに「震災級」を超えています。ちなみに、2000年以降で四半期のGDP成長率が最も大きく落ち込んだのは、2008年のリーマン・ショックの後の2009年1月から3月のマイナス4.8%でした。30代半ば以上の不動産業界の皆さんは、当時の大変さをよく覚えていると思います。
実はすでにマイナス成長に突入している日本経済。2020年の1月から3月はこれに、コロナの影響が加わります。
コロナで不況になったというより、もともと景気は不穏な状態にあって、コロナ騒動でさらに深刻になった、というのが真相といえそうです。