働き方改革を知っていますか?
「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。2020年、2回目のコラムでは「働き方改革」について取り上げます。(リビンマガジンBiz編集部)
2019年4月1日に「働き方改革関連法」が施行されて、大企業は対応に追われています。大企業じゃないから関係ない?いえいえ、20年4月からは、一部の中小企業にも、法が適用されるんですよ。もはや他人事ではありません。
そもそも、人手不足の昨今、ブラック企業のままでは、まともな人材を採用するのは難しいはず。業種を問わず、人材を確保するためには、働き方に向き合わざるを得なくなってきています。
帝国データバンクが約1万社を対象に19年12月に実施した調査によると、働き方改革に「取り組んでいる」と答えた企業は60.4%。取り組んでいる企業は、19年8月の調査では37.5%だったので、大幅に増えたというか、半数以上の企業が働き方改革に取り組んでいることになります。
このデータをもうちょっと見てみましょう。企業の規模別に、働き方改革に取り組んでいる割合を見てみると、大企業は75.7%、中小企業は56.7%、小規模企業は41.6%でした。中小企業でもすでに半分を超えています。
では、どんな改革に取り組んでいるのか。一番多いのは、「休日取得の推進」で77.2%。次に多いのが、「長時間労働の是正」で71.0%でした。この二つが、働き方改革の定番のようです。
働き方改革のポイントはいくつかありますが、一番影響が大きいのは、時間外労働の上限規制の導入でしょう。時間外労働について、月45時間、年360時間を原則的に上限とすることが定められています。もうひとつは有給休暇の取得です。毎年5日は取得してもらわなければなりません。
時間外労働と有給休暇については、大企業は2019年4月施行の法律で対象になっていますので、勤怠管理を今まで以上にしっかりやったり、有給を取れと呼びかけたり、いろいろやっています。
また、2020年4月からは、大企業を対象に、正規雇用と非正規雇用の間に不合理な待遇差をつけることが禁止されます。何をもって「不合理」とするかは、ガイドラインで詳しく定めるようです。
「早く家に帰れ」「休め」と言われても、仕事の量が変わらなかったら、従業員はどうにもなりません。一部の企業では、PCの使用にも制限がかけられているので、家で仕事することもままなりません。「勤怠管理がうるさすぎて、仕事がはかどらない」とぼやく大企業の従業員が増えています。こんなに手足を縛られて、グローバル競争に勝てるのかという声も聞こえてきています。
しかし一方で、プライベートや健康を大切するのも人として大切で、社会が新しい働き方に慣れる必要がありそうです。
一方で、働き方改革は不動産業者にとって、新たなビジネスを生む可能性を秘めたものでもあります。在宅勤務やリモートワークの増加に伴う、サテライトオフィス需要拡大です。シェアオフィスとか、コワーキングオフィスとか、貸し会議室とか、オフィスを細切れにして時間貸し・月貸しする需要が増えています。
これを利用する企業の側から見ると、どんな状況なのでしょうか。帝国データバンクの調査によると、働き方改革に取り組む企業のうち、「サテライトオフィスやテレワークの導入」を実施する企業は7.8%にとどまっています。まだまだ少ないですね。ただ、男性の育児休暇取得など、男性の家事・育児や介護への参加が増えることを考えると、働く時間を自分の裁量で自由に決められる働き方は今後も増える見通しで、それに合わせた柔軟なオフィススペースを求める声が出てきそうです。
そしてそれは、従来のオフィス街ではなく、住宅地のそばにあると便利という声もあります。今までオフィス需要がなかった場所に、サテライト需要のオフィスを作る動きがあるということです。
働き方改革は経営者にとっては悩ましいもので、従業員にとっても実は煩わしいものです。しかし、新たなビジネスチャンスもあると思えば、見方も変わってきます。ところで、あなたの会社は働き方改革に取り組んでいますか?