日経新聞を読まない君たちへ
「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は実はよく知らない総合商社って何なの?と題して、多様化する総合商社について紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)
日経新聞を読まないみなさんでも、さすがに総合商社の存在はご存知でしょう。
就活生が入社したい企業ランキングで根強い人気を誇る総合商社。言ってみれば、商社マンは日本のサラリーマンヒエラルキーのトップに君臨するエリート中のエリートです。
とはいえ、総合商社が何をやる企業なのか、よくわかっている人は少ないかもしれません。日経新聞を読まないみなさんだったら、世界を股にかけて活躍する企業、くらいの認識じゃないですか。一部の商社は不動産業でも存在感を発揮しているので、デベロッパーだと思っている人もいるかもしれません。そこで今回は、総合商社とは何かについて簡単におさらいします。
商社は、ざっくりいうと、総合商社と専門商社に分かれます。総合商社は、トップ争いを繰り広げる三菱商事と伊藤忠商事、そして三井物産、そのほかに住友商事、丸紅、双日、豊田通商などがあります。かつて「ラーメンから航空機まで」をキャッチフレーズに掲げていた会社があったように、分野を問わず、なんでも扱う企業です。一方、専門商社は、食品や繊維、機械など、扱う分野を限定した企業です。今回は、主に総合商社について見ていきます。
総合商社は、もともとは、企業と企業の間に入り、モノやサービスの取引を仲介する「トレーディング」をする会社でした。原材料の生産地からそれをもとにモノをつくる企業、仲卸の企業、販売する企業、それぞれの間をつないでいく役割です。インターネットがなく、情報を手にいれるのが難しい時代には、作った製品をどこに持っていけば買ってくれる・売ってくれるのか、見つけるのは難しいものでした。商売を始めるには、商社に間に入ってもらうと効率的だったわけです。
しかし、間に入る企業が増えれば増えるほど、モノの価格は高くなります。1990年代に「中抜き」の動きが活発化し、生産者やメーカーが消費者に直接販売する傾向が強まったことで、商社の社会的な優位性は大きく低下しました。今はブイブイ言わせている商社にも、冬の時代があったわけです。
不遇を経て投資会社へと進化した総合商社
そんな商社ですが、2000年代に入り、巨大企業として復活を遂げます。トレーディング事業で培った顔の広さを生かして、事業や企業に投資する事業へと乗り出したのです。「これは伸びそうだぞ」という事業や企業にお金を出し、トレーディングのネットワークを使って経営を支援し、儲かったらその分け前をいただく。簡単にいうとそういう事業です。
特に、資源分野への投資で一発当てたことで、業績が飛躍的に伸びました。単純にお金をだすだけではなく、海外の鉱山などを買って、採掘・運搬・販売のルートを作ります。石油や鉄鉱石、石炭、銅などの資源価格が大幅に値上がりしたことを受けて、商社も大きな儲けをあげました。幅広い分野でトレーディングをして、投資もする。そういう企業は世界で他に例がなく、「総合商社」という日本独特のジャンルが確立されました。
しかし、資源で大儲けする戦略は長くは続きませんでした。2008年のリーマン・ショックを機に、世界的に資源価格が低下し、さらに資源の有力な買い手だった中国の成長率が緩やかになったことも追い打ちをかけて、資源事業は大きな打撃を受けます。2016年3月期の業績では、三菱商事と三井物産が創業以来の赤字に転落して、大きな話題になりました。主な要因は、2社が持つ資源の権益の評価額の下落でした。
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