WeWorkは、(米国では)15年間の契約でビルを借り上げて、小分けにして顧客に転貸するビジネスモデルです。コストを抑えるために、古いビルを借りたりと工夫をしていたと伝えられています。不動産業に携わるみなさんはわかると思いますが、転貸ってそんなに利幅の大きいビジネスモデルではないですよね。あまり儲からない。
しかも、WeWorkの場合、なまじ内装がオシャレなだけに、先行投資の費用がかさみます。また「コミュニティ」を維持するためのシステムや人件費など通常の不動産運営にはないコストの負担もあります。だから、WeWorkって実は儲かっていないんじゃないの?という指摘は以前からありました。
実際、WeWorkの2019年1~6月期の業績を見ると、約980億円の純損失でした。これって尋常じゃない赤字額です。この数字には、市場関係者も驚きました。
そもそもなぜ、こんな赤字体質で事業が回っていたのか。理由の一つは、ソフトバンク・グループのビジョン・ファンドの支えがあったことです。ビジョン・ファンドはWeWorkに100ドル億円以上を出資していて、同社の外部の株主としては最もたくさんの株式を持っています。
この豊富な資金力を背景に、WeWorkは不動産を仕入れて、拠点数を増やしてきました。日本での急速な拠点数拡大も、ソフトバンクの支援があってこそのものです(WeWorkのオフィスに行くと、大抵、ソフトバンクまたは関連会社が入居しています。涙ぐましい)。
スタートアップ企業が成長するには、先行投資が欠かせません。特に最近の米国のIT企業は、赤字覚悟の大規模投資で市場を抑えて、後々に大きく稼ぐというモデルを採用する企業が増えています。「今は成長の段階だから」と赤字を許容する空気があり、WeWorkもそうした段階にある一社だと認識されてきました。しかし、果たして、身の丈にあった投資だったのか。ビジネスモデルが大きく問われています。