不動産業の中でも資産運用を目的としておこなう土地活用ですが、いつから始まり、発展したのはいつなのでしょうか。歴史を紐解いていくと、現代にも応用できる知識が身につくはずです。(リビンマガジンBiz編集部)
■江戸時代の賃貸経営
土地活用の歴史は江戸時代の賃貸経営から始まります。江戸時代では、土地活用という言葉ではありませんでしたが土地を持っている地主が長屋を建て、賃貸経営をおこないました。表通り沿いを富裕層である商人に、間口の狭い路地は低所得者に貸し出すことが地主の普通でした。江戸の人口は増え続けていたので、賃貸経営は安定的な収益をもたらす安全資産として考えられていたそうです。
江戸時代の街並み (画像=GATAG)
■賃貸経営で無一文から資産家に
明治時代でも、都心部、いわゆる東京や大阪の人口流入は激しく、借家に住む人がたくさん居ました。東京では1922年において93%が借家居住でした。そのため、不動産経営は資産運用の一つとして重要で、商業や金融で増えていく資産を不動産に投下し、居住地の不足を補っていました。江戸時代から続く、不動産経営はその時代において当たり前の資産運用でした。投資家であった大崎辰五郎は1885年に賃貸経営を始め、最初は借地に小さな貸家を建て、どんどんと規模を拡大していきます。最終的には1000坪を超える土地を所有し、賃貸経営をおこないました。経営を始めたころの大崎は、資産などほとんど持ち合わせていませんでしたが、わずか8年ほどでこれだけの土地を所有するに至り、それだけ賃貸経営の利益率が高かったことがうかがえます。
■現代のような土地活用の出現
土地活用という言葉が本格的に使われだしたのは戦後以降でした。当時の新聞記事にも土地活用に関する記事や広告が多数あり、1943年6月2日の読売新聞に「一切の土地活用」という見出しと共に土地活用という言葉が初登場しました。
1980年代、特にバブル景気のころになると三井不動産や住友不動産、野村不動産など大手企業がこぞってアパート経営など土地活用に関する新聞広告をこぞって出稿していました。
1980年代当時の新聞広告 (画像=リビンマガジンBiz編集部撮影)
東京では、地価上昇と開発ブームにより、「土地の有効・高度活用」を合言葉にして様々な制度の導入が検討されました。例えば、長期保有土地の譲渡に係る税負担を大幅に軽減するなど土地所有者に対して宅地供給の促進を図る動きなどが出てきました。
国土交通省住宅局のデータによると、1980年には約30万戸だった賃貸住宅の建設戸数が1989年には約82万戸と3倍近くに増えています。これは、建築費の安定や金利が低水準だったことにより、地主の賃貸経営に関する意欲が高まったことに起因します。また、土地活用の普及によって、家賃保証や一括借り上げといった、空室による賃貸経営のリスクを削減する制度が登場するようになりました。
また、この頃から新しい土地の活用として駐車場経営が始まります。バブル崩壊後の売れ残った遊休地の活用として誕生し、住宅よりも短期間で契約ができ、費用も掛からないことが利点になり、コインパーキング経営をおこなう地主も増えていきました。当時、駐車場は月極駐車場や店舗駐車場くらいしかなく不足感がありました。さらに、有人から無人へと転換していき、パーク24などのコインパーキング会社に管理を任せて経営をおこなうニーズが高まったと言います。
■まとめ
歴史を振り返ると、江戸時代から土地活用は始まりました。大地主が土地を有効活用し、商人や庶民に店舗や住宅を貸し出す賃貸経営が主流でした。明治時代では、賃貸経営で巨万の富を築く経営者も現れました。戦後になると現在と同じような土地活用が生まれ、大手企業もこぞって参入し、バブル経済と共にその動きは活発になっていきました。また、アパート経営のみならず、駐車場経営などの変わり種も生まれていきます。
参考文献:日本不動産業史(名古屋大学出版会)、読売新聞