不動産売買仲介の現場では、すこしの誤解や説明不足が、のちに大きなトラブルに発展してしまうこともあります。実際にどういったトラブルが起こるのでしょうか。またその対応方法とはどういったものがあるのでしょうか。すばやい初期対応が重要です。必ず覚えておきましょう。(リビンマガジンBiz編集部)
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不動産売買仲介のトラブルは、買主に起こる?
不動産売買仲介では、物件を購入する買主側にトラブルがよく起こります。売主は、不動産が売れてしまえば問題はありません。しかし、買主はそれから購入した不動産を使用する(住む)ことになります。不安から感情的な反応を招くこともあるので、細心の注意をはらいトラブルの芽を摘みましょう。
購入前に行った「重要事項説明」が十分であれば、トラブルの発生は大幅に軽減されます。
しかし、不動産売買仲介では、契約に至る前や、契約後の対応にも、トラブルの原因があります。
口頭でのやりとりに関するトラブル
売主から売却の委任を取りたいがために、「必ず○○万円で売却できます」といった断定的な表現や、買主からの「あと100万円安くしてくれたら購入します」という言葉に「分かりました」といった曖昧な表現をしてしまうと後にトラブルになってしまうことがあります。
不明確な事柄に対して、曖昧な返答や誤解を招く回答をしてしまうと要注意です。
「できなかった分は手数料で差し引いてくれ」と言われてしまう可能性もあります。
意思表示や契約は、口頭でも成立してしまいます。しっかりと事実確認をしたのちに回答するように心がけましょう。
買主が希望する物件を見つけたが予算が合わない時のトラブル
買主の希望通りの物件を探すことは非常に難しいことです。買主には、希望沿線や最寄り駅、駅からの距離、広さ、築年数、予算など、非常に細かな希望があります。
そんな中で、買主の希望にそった物件が見つかると、営業パーソンとしては、すぐにでも購入してほしいと思います。それが希望予算より少し高かった場合でも、多少の無理をしてでも購入をすすめてしまうかもしれません。
しかし、買主の所得や収入が将来どう変わるのかは誰にもわかりません。ここで無理して購入してしまったばかりに、返済プランに狂いが生じ、買主の人生が左右される可能性もあるのです。
そこで、買主に物件を紹介していく際には、希望条件の優先順位をヒアリングしていくようにしましょう。「どの条件も譲れない」と考えている買主であっても、なにかしらの妥協点があるはずです。
決して無理な購入をすすめないようにしましょう。
売主の意見が頻繁に変わり、売却活動ができない
物件調査や価格の査定をして、媒介契約をしたにもかかわらず「やっぱり売りたくない」「売りやめにしてほしい」と、売り主の態度が変わることは非常によくあります。
売り出した時期が公示地価や路線価が発表されたタイミングで、周辺の地価が下がったことが分かると、急にキャンセルをする…といった話もよく聞きます。担当者からすると、がっかりしますが「なるべく高く売りたい」という売主の心情を考えると、納得できる部分もあります。
しかし、今の不動産市況を考えた場合、一度低下し始めた地価が再び上昇する可能性があるかないかは、売主よりも不動産営業マンが知るところです。
売却をためらう理由が価格の場合は、売主が納得するようにしっかりと根拠を示しましょう。
また、売主家族の意見が分かれている場合もあります。
その場合は、焦らずに家族同士でじっくりと話し合ってもらうしかありません。売主が将来的に実現したい目標は何なのかを当事者同士で話し合ってもらいましょう。
境界線に関するトラブル
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通常では、境界線の問題は売買契約が締結される前に解決させ、買主に引き渡すことが原則です。しかし、過去の売買契約書などに境界線が記載されていることから、境界線確認をしていないケースがあります。また売主も自覚していない場合もあり、引渡後に境界線トラブルが発生してしまうこともあります。
こういったトラブルは、未然に察知し回避することが重要です。現地調査を必ず行い、その際に境界線も確認しておきましょう。境界線が不明確な場合は、売主と隣地の所有者が同席のもと「境界線の立ち会い」をしなければなりません。しかし、売主と隣地の所有者が長年揉めているという話はよくあります。
その際には、土地家屋調査士に依頼するなどしたうえで、境界を確定します。ここで注意するべきは、調査費用は誰が負担するかということです。売主・買主と営業パーソンでしっかりと協議しましょう。
付帯設備・現況の確認漏れ
重要事項説明を行う際に、「物件状況等報告書」や中古不動産の場合は「付帯設備表」といった書類を提出し、隠れた欠陥「瑕疵」に関する報告を行います。しかし、その書類に記載のない設備があればどうでしょうか。それが原因でトラブルが発生する場合があります。最悪の場合、損害賠償を請求される可能性もあるので注意が必要です。
営業パーソンは、売主からできるだけ細かく状況確認や設備に関するヒアリングをし、確認していきましょう。また、買主には、重要事項説明書よりも入念に、分かりやすさを意識して説明しましょう。
物件周辺の嫌悪施設等の説明漏れ
騒音や振動の原因である工場や、河川の悪臭、周辺の建物による電波障害などは、あらかじめ確認しておきましょう。
しかし、工場の有無などは、具体的に何m以内にある場合は説明しなければならないのでしょうか。宅建業法には具体的な距離の基準はありません。ではどうやって考えるかというと、生活導線上にそういった施設があるかどうかになります。
例えば反社会性力の事務所が、子どもが学校に通う通学路上にある。といった場合は、事務所が家から離れた場所にあっても、伝えたほうがよいと考えられます。
現地調査や物件調査時には、駅から物件までにそういった施設がないかなどを入念に確認し、生活圏内に伝えるべき嫌悪施設がないかを確認しましょう。
不動産売買仲介業のトラブルは他にもある
不動産FCを全国展開する某大手不動産会社に話を聞いたところ、お客様から上がってくるクレームの多くは、「コミュニケーションの問題」が原因になっているとのことでした。
普段、お客様と折衝・交渉をする営業パーソンのコミュニケーション能力がクレームの要因になっているとのことです。
①来店時に購入時期がまだ先だと言ってから、急に高圧的な態度になった
②スケジュールや約束した時間が守れない
③不動産会社のHPからSNSで問い合わせをしたら、いきなり個人情報を求められた
このような声が多数よせられるそうですが、全て未然に防げるものばかりです。
①はすぐに営業成績につながらないお客様だとわかり、がっかりした態度からでてしまったのでしょう。そのような態度が垣間見えれば、お客様はないがしろにされたと思い、大きなクレームにつながります。すぐには成績につながらないお客様でも、あとから大きな商談になったり、別のお客様を紹介していただいたりすることもあります。プロとして恥ずかしくない接客をこころがけましょう。
②急なお客様が続いて、別のお客様との約束に間に合わないこともあります。そんなときは、事前に連絡をいれましょう。「今週中に査定所を送る予定でしたが、最新の情報を反映いたしますので、いましばらくお待ちください」など、「最新の情報」や「もう一度確認したいので」といった前向きな情報を織り交ぜて、話せば案外、わかってもらえるものです。
③最近はLINEなどのSNSでお客様とやりとりすることが増えました。便利なツールですが、お客様との距離感を間違えるとトラブルにつながります。顔を見てのコミュニケーションを重視するかたも多いので、まず一度は来店してもらったり、訪問の機会を作る方が安全でしょう。
また実店舗型の会社では、「店の前でタバコを吸っていた」「話し声がうるさい」といった近隣住民からのクレームもあるようです。
前出のFC会社の担当者は、「コミュニケーション不足によるクレームは新人社員に多い」と言います。マニュアル通りの接客しかできない営業パーソンには、とっさには対応できる能力がありません。そういった営業マンには、ロールプレイングといったOJTや先輩社員と同行して経験値を付けていくことが重要です。
まとめ
不動産売買仲介におけるトラブルは、「境界線」や「言った言わない」、「説明漏れ」などが原因で発生します。これらに共通しているのは、「売主や買主とのコミュニケーションがうまくとれているか」ということです。
最期に紹介したクレームなども細かいコミュニケーションによって未然に防げることができるものです。
よく、不動産仲介営業は「サービス業」であるといいます。お客様だけでなく、周辺の住民や、あらゆる人たちと上手に付き合っていくことは、営業パーソンにとっていつかプラスになるでしょう。