不動産の取引は、様々なルールや法律によって厳しく規制されています。多くの法律が関わってくるためプロである宅地建物取引士でも、分からないことが少なからず存在します。そこで、不動産賃貸仲介にまつわる、よくある質問をまとめました。(リビンマガジンBiz編集部)
不動産適正取引推進機構には、年間1万件近いトラブル相談が寄せられています。その中でも半数以上は賃貸に関する相談です。賃貸仲介業は広く、入居者を募集し、賃貸借契約を結ぶまでの業務のことを指します。相談も契約に関するものが多いようです。そこで、契約に関する質問と答えを作成したので、参考にしてみてください。
■契約に関する相談
■外国人入居者の拒否
Q. 賃貸仲介事業者Aの店舗にマンション入居希望者Bが来ました。内見をすると気に入ったようでその場で契書にサインしてもらいました。しかし、契約直前でマンションオーナーのCはBが外国籍であることを知り契約を拒否しました。仲介会社として、どのように対応すれば良いでしょうか。
A. 損害賠償を負うリスクがあると説明して、再考するように説得しましょう。
外国籍であるという事のみを理由に契約締結を拒否すると、入居希望者に精神的苦痛を与えたとして、損害賠償請求を負います。契約するかしないかは、オーナーの自由であり、契約を強制することはできません。しかし、外国籍のみを理由にした契約拒否は不法行為です。なので、賃貸仲介事業者としてはオーナーに対して損害賠償責任を負う可能性があるとしっかりと説明しましょう。
(画像=写真AC)
■同じフロアの別室で自殺が
Q. 賃貸仲介事業者Aは入居希望者Bと賃貸マンションの仲介をしました。賃貸仲介事業者Aは以前マンションオーナーから同じフロアの別室で4年前に入居者が自殺したと告げられていました。しかし、そのことをBには説明せず、契約をおこないました。数か月後、Bは同じフロアで自殺があったことを知り、説明されていたら入居しなかった。退去するので、費用を請求すると、損害賠償を求めてきました。
A. 損害賠償を支払う必要はありません
不動産の仲介事業者は宅地建物取引業法によって、物件にかかわる重要事項の説明を義務付けられています。この重要事項には、物件にまつわる心理的瑕疵も含まれます。説明を怠った場合、当然ながら損害賠償責任が負わなければいけません。今回は、同じフロアの別室で自殺があった場合の損害賠償の有無です。ここで、問題になるのは心理的瑕疵があるかどうかです。一般に自殺のあった部屋と他の部屋では感じる嫌悪感はかなり違いがあります。判例でも、別室での自殺について、希望者に告知義務はないと示しています。
■隣人からの苦情
Q. 賃貸仲介事業者Aは入居希望者Bと賃貸マンションの仲介をしました。
Aは、その部屋の隣人に問題があると前から知っていました。子どもがうるさいからとドアを叩いてきたり、ベランダの洗濯物を汚したりしていたと言います。しかし、Aは、その事を入居希望者Bに伝えないまま、契約を成立させました。案の定Bは、隣人からの迷惑行為を受けて退去してしまいました。そこで、Aに対して、このことを知っていたら契約しなかったと主張し、退去に掛かる費用を請求してきました。これは、払わないといけませんか。
A. 費用を支払わなければいけません
不動産の仲介事業者は宅地建物取引業法によって、物件にかかわる重要事項の説明を義務付けられています。この重要事項には、周辺環境についても説明しなくてはいけません。説明を怠った結果、賃借人が不利益を被った場合、損害賠償責任が発生します。今回のケースで、仲介事業者は、迷惑隣人がいる事実を知っており、また問題が発生する可能性が高かったです。隣人も周辺環境の一つになります。仲介事業者は問題が発生するかを客観的に判断しなくてはいけません。このケースでは、説明するべきでした。
(画像=写真AC)
■契約直前での入居取りやめ
Q. 賃貸仲介事業者Aは入居希望者Bと賃貸ビルの契約を行いました。申込書も記入してもらい。契約終了となる直前にBがビルのセキュリティ、防火、耐震性を懸念して、交渉がストップしました。その期間は3か月に及びましたが、なんとか契約に合意してもらいました。しかし、Bは一方的な都合で別の物件を賃貸し、賃貸仲介事業者Aとの契約を破棄しました。AはBと入居交渉をおこなっている間、対象物件の募集をストップしていたため、その間の損害賠償をBに請求しました。
A. 入居希望者Bに対する損害賠償が認められる可能性が高いです
本件のように、契約が成立する直前までいったが、成立に至らないケースで問題になることは多いです。契約は当事者間の信頼による部分が多いです。このケースでは、契約が成立するとの印象を与え、仲介事業者が、募集を停止するという財産的な損失を被っています。契約を不当に破棄した入居予定であったBは信義則上の義務違反に当たります。この被害を被った期間の賃料相当額を請求できる可能性が高いでしょう。
■まとめ
重要事項をしっかりと説明しなければ、後々でトラブルに巻き込まれるのは仲介した自分です。
契約が済めば終わりではなく、その後も誠意ある付き合いをしていかなくてはなりません。
知っている内容は包み隠さず入居希望者に話すことが、重要です。