他人名義の不動産は原則として売却できない
当然のことかもしれませんが、他人名義の不動産を勝手に売却することはできません。不動産の多くは生涯における一つの大きな財産です。たとえ家族であったとしても、自分の名義でなければ勝手に売却はできないのです。
しかし、近年は認知症や介護などの関係で、所有者本人のために不動産を売却して、それを治療費や介護費用に充てたいという家族も増えています。このような場合、他人名義の不動産でも売却が可能なのでしょうか。
ここでは、他人名義の不動産を売却できる例外パターンについてご紹介します。
売却可能となるケースはどんなケース?
不動産の名義人が病気などのために自力で売却行為ができないというケースがあります。そのような場合、意識がはっきりしているのであれば、売却を承諾する旨が記された委任状などを用意することで、代理の者が不動産の売却手続きを行うことが可能です。
ただ、認知症などで名義人の意思が確認できないということもあるかもしれません。そのような場合、「成年後見制度」を利用することで、名義人のために売却が必要という場合において、成年後見人自身の判断で不動産の売却が可能です。この制度を利用したときの主な流れは次のとおりです。
1.後見開始の裁判を申し立てる
2.後見人の選出
3.家庭裁判所の許可審判が下りて初めて有効となる特約を付けた売買契約を締結
4.不動産の売却について家庭裁判所に許可を申し立て、許可を得る
5.売買契約を履行する
手続きには、申立書と不動産の名義人(本人)の「戸籍謄本」と本人の「診断書」、成年後見人候補者の「戸籍謄本や住民票、身分証明書、登記事項証明書」など多くのものが必要とされています。また、最終的な許可までは少なくとも約3~4か月は見ておく必要があるでしょう。これらを専門知識の無い人が滞りなく準備・処理するのは難しいので、適宜、司法書士などに頼ると良いと思います。
また、この制度を利用しても、後見人は売却の判断ができるだけです。売却で得た収益は当事者=名義人のものですので、後見人として手続きを進めても、決して売却代金が自分に入ってくるわけではないということは理解しておきましょう。