「主構造」という言葉はやや専門的ですが、「木造」、「鉄筋コンクリート造」などといった言葉ならばよく耳にしたことがあると思います。この「○○造」という言葉で表現されるのが建築の主構造を構築するための材料です。簡単にいえば、建築の基本的な骨格・構造の部分を「主構造」といいます。ラーメン構造(柱・梁構造)の建物ならば柱や梁、壁式構造ならば壁や床板などがそれにあたる部分です。
これと似た言葉は建築基準法で定義されている「主要構造部」です。「主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、揚げ床、最下階の床、廻り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする」(建築基準法第二条五)。これは火事や地震時の安全性の基準を定めるための用語定義なので屋根や階段も含まれるのです。
さて話を主構造に戻すと、じつは現代建築においてこの主構造材料はかなり限定されています。特殊な例外はあるのですが、日本でいま建てられる建築のほとんどは木か、鋼鉄か、鉄筋コンクリートで作られています。かつてはレンガ造などの組積造もありましたが、耐震上の弱点などから今はある程度以上の規模の建築では用いることができません。
ピラミッドあたりから続く建築の歴史でみれば、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などはとても歴史の浅い構造です。鉄骨造は19世紀、鉄筋コンクリート造は20世紀から普及したものです。このように主構造の選択肢が増えることは大変な事件で、なにしろ古代から中世までは木造とレンガや石の組積造くらいしかなかったのですから、一気に選択肢が倍増したわけで、しかもそれまでできなかった形態や大きさの構築物を作ることが可能になりました。これが建築史における大転換点である「近代建築」の登場です。当然、現代もこの近代建築の時代です。
では、木・鉄・鉄筋コンクリートはどのように使い分けられているのでしょうか。木造のニーズは圧倒的に住宅で、逆にそれ以外の種類の建物ではあまり用いられません。また鉄骨造は体育館のような大きな架構や大規模ビル、高層ビルなどでよく用いられます。近代建材を代表する鉄筋コンクリート造は、あらゆる種類・規模の建築で広く使われています。このような使い分けはもちろん、それぞれの材料の特性や、制度によるものです。各材料について、次回以降のコラムでご説明したいと思います。(了)