前回は地主さんの「底地の権利解消方法」をご紹介しましたが、今回からは底地についていくつかのポイントを個別に説明していきたいと思います。
今回は「底地権を借地人さんへ売却」について書きます。
底地というのは、不動産の中では典型的な採算不良地であり、多額の相続税がかかることまで考えると収支は赤字です。
地主さんにとって、相続時に相続税を払って国から底地を買うようなものです。
従って相続不動産コンサルタントとしては、地主さんには、相続が発生する前に借地人さんが底地を買ってくれるんだったら売却することをお勧めしますが、たとえ底地であっても先祖代々受け継いだ大切な地所と考える古いタイプの地主さんも非常に多く、そんな地主さんは基本的に底地を手放しません。
逆に、相続発生前に余裕をもって相続対策をおこなう地主さんだったら、もし借地人さんが底地を買いたければ売却に応じてくれるでしょう。
地主さんの財産構成、資産規模、相続税額、それから土地に対する思い入れや考え方次第で、底地を売る売らないの方針が変わってきます。
それでは、もし借地人さんが地主さんに底地を買わないかと言われたら、買うか買わないかどっちがいいでしょうか?
結論をいうと、借地人さんは底地が買えるんだったら買った方が絶対にいいです。
1.借地人さんは底地を買えるんだったら買った方がいい。
都市部住宅地の借地権は、対地主さんとの関係では60%とか70%あるとされますが、借地権を地主さんの底地権と切り離して単独で第三者へ売却する場合、実際の取引価格は高くても50%前後です。路線価の借地権割合では普通売れません。さらに地主さんへ借地権譲渡承諾料を払うと手取りはよくても50%以下です。
底地を買うことができれば、更新料や建て替え承諾料、地代を払う必要がなくなりますし、自分の所有地としていつでも100%の価格で売却できるようになりますから、底地は買えるんだったら買った方がいいといえます。
もし地主さんから底地の購入を打診されたら、借地権の土地を所有権にする数少ないチャンスかもしれません。
2.底地価格の目安
売買価格は話し合いで決めるものなので底地権の割合を何%にしなければならないという決まりはありませんが、地主さんと借地人さんが対等ならば「時価×路線価底地権割合」で売買成立するケースが多いです。
路線価とは、国が毎年発表する相続評価額の算出基準となる価格であり、各路線(道路ごと)に価格が付いていて、そこに借地権割合と底地権割合を示す記号(ABCDEFG)が付いています。
その記号が底地権割合を示すものでもあり、東京23区の住宅地でいうと、底地権割合はたいてい30%(C地区)、あるいは40%(D地区)となっています。
この「時価×路線価底地権割合」で底地が買えるなら、迷わず買うべきと考えます。
権利的にも財産価値としても不安定な借地権を、底地を買うことで自分の所有地にするメリットは大きいからです。
3.底地権売買のタイミング
地主さんに相続税の支払い等の切実な事情があれば、借地人さんは多少なりとも安く買える可能性があります。
逆に借地人さんが底地を買いたいのに、地主さんがあまり売りたがらなければ、高くなるでしょう。
もし地主さんが底地を売る気が全くなければ、いくら高くても借地人さんは買えないですし、借地人さんが資金繰りできなければ地主さんは売りたくても売ることができません。
要するに底地は、売る側と買う側の力関係で売買価格が決まり、地主さん借地人さん双方のタイミングがポイントとなりますので、底地の権利を解消したいならば、このタイミングをぜひ外さないようにしましょう。