古くからの住宅地や人口密集地域では、建築基準法の道路に間口が2m以上接していないため、建替えできない土地が結構存在します。
建替えできない土地は、隣接地所有者以外の人にとって価値がありません。
隣接地所有者がいらないといえば、どこかの売れない中古リゾートマンションと同じく、まさしく負の遺産です。
いわれのない借金を背負っているのと同じ!
地主さんにとっては、価値がない土地でも固定資産税はかかるし、相続時にはそれなりに相続税がかかってしまいます。
わずかな地代をもらっても、持っているだけでマイナス、ご先祖様から受け継いだ土地ではありますが、いわれのない借金を背負っているのと同じです。
コンサルタントの立場からはっきり言わせていただきます。
ないほうがいい土地です!
負の遺産ですから、子供は誰一人として相続したくないでしょう。
どこかに寄付したくてもできないし、誰ももらってくれないとしたら、もうお手上げです。
それが更地ではなく、借地人さんに貸している底地であったら、さらに問題が複雑になってきます。
借地権を相続する人がいないとしたら?
少子化の時代です。借地人さんに相続人がいないというケースが今後増えてくるでしょう。
あるいは、借地権の財産価値があるならまだしも、建物が古くて建替えできない借地権をいったい誰が相続する?という問題もあります。
建替えできない借地権や老朽化した建物は価値がないのですから、解体して地主さんに土地を返すくらいなら、子供たちは最初からいらないというかもしれない。
地主さんは、建替えできない借地権の場合、借地人さんの法定相続人の全員が相続放棄することを十分想定しておかなければなりません。
家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらわなければならない!
地代の支払いがないということで、契約解除しようにも相続人がいない、あるいは法定相続人全員が相続放棄すれば、契約解除を通知(交渉)する相手がいないことになります。相続人がいないといっても、日本の法律では、地主が建物を勝手に取り壊すことができません。
地主さんが何らかの形で借地問題を解決したいなら、相続人がいなくても、借地人さん側の相続財産管理人を地主さんの自費で家庭裁判所に選任してもらうように申立てなければなりません。そのためには、まず相続財産管理人の選任費用として予納金を納めなければなりません。
弁護士さんに頼んで裁判所に選任を申し立てると、依頼する弁護士費用の他に、予納金として20-100万円程度の出費を覚悟しなければなりません。
そして裁判所に選任された相続財産管理人(弁護士)との間で、借地権付建物を売却するか、取り壊すか等々、話し合うことになります。
建替えできない底地で、建物がボロボロだとすれば、まず買い手はみつからないでしょう。
買い手が見つからない借地権ですから、相続財産管理人は地主さんに借地権を買い取ってくれないかと打診してくるかもしれません。
地主さんは建替えできない借地権を買い取るメリットはありません。
結局、相続財産管理人とは、最終的に地主さんが解体費用を負担して借地契約を解消するという調整になるのではないでしょうか。
こうなると、経済的価値がまったくない借地権整理のために、未納地代は回収できない、予納金、地主さんが依頼する弁護士費用、建物等の解体費用を地主が払わなければならない。なおかつ、建替えできない底地にも不合理な相続税がかかる。
地主さんにとっては踏んだり蹴ったりです。