ーーー地盤の弱い土地の評価ーーー
地盤の強弱は土地の価格にどのように影響するのでしょうか?
<不動産の価格形成>
そもそも不動産の価格はどのように決まるのでしょうか?
不動産鑑定評価基準によれば、不動産の価格は
①その不動産に認められる効用・・・家賃収入や居住の快適さ等
②相対的希少性・・・・・・・・・・同じ土地は一つもなく面積も限られている等
③有効需要・・・・・・・・・・・・実際に購入・投資をしたいという需要者の存在
の三者の相関結合によりその経済価値が形成されるとあります。
一方、土地基本法では不動産は
①人口及び産業の動向・・・・人口増や産業振興は土地需要を増加させる
②土地利用の動向・・・・・・農地から住宅地へ、工業地から商業地へ利用形態が変わる等
③社会資本の整備状況・・・・道路、鉄道、上下水等の社会インフラ
によって価格変動するものと規定されています。
この社会資本のうち最大のストックは道路であり、住宅地はこれに加えて鉄道、
上下水道、防災施設、文教施設、公共賃貸住宅などが多くを占めます。
これらの投下資本はキャピタリゼーション仮説に基づき地価に転化するという作用があります。
したがって、社会資本投資の多額な地域(住宅地では区画整理地、埋め立て地の分譲地)
は従前に比較して地価が上昇することになります。
<軟弱地盤の地価>
軟弱地盤についても同じように地盤改良のためのインフラ投資が地価を支えることに
なると考えられます。
震災後の液状化防止対策として行われている、大規模な社会資本投資は
その効果を生み出すものです。
したがって、他の条件が同等であるならば、液状化の可能性のある地域・場所や
いわゆる軟弱地盤の地域の土地については社会資本投資の必要性に応じた格差を設ける
のが妥当と考えられます。
なお、軟弱地盤は液状化の可能性のある土地だけではなく、地滑りや不同沈下を起こす可能性
のある土地も含めて考なければなりません。
たとえば次のような地形でN値が1桁のものは軟弱地盤として追加投資を行う必要があります。
現在宅地化されている地域でもこのような地形は旧版地形図で読み取ることができます。
<軟弱地盤の評価手法>
不動産の評価には大きく原価法と収益還元法の2種類がありますが、
この格差の織込み方には違いがあると考えられます。
以下は私見ですが、まず、原価法では地域要因格差率で考慮します。
これは投下資本の多寡が価値を形成するという原価法の基本的な考え方に沿ったもので、
地盤改良前あるいは地盤改良の不要な状態の地価を基準とし、
未投資の改良費用相当額を控除して調整します。
一方、収益還元法では還元利回りにリスクプレミアムとして上乗せして調整することを考えます。
これは地盤改良による追加投資分を償却率として換算し、これを還元利回りに上乗せすることで
価格にストレスを与えるものです。
<原価法>
一般的な地盤改良費は坪3万円程度であり、23区内の標準住宅地価格は坪100万円程度
ですからこの比率をとって格差率を3%程度と考えます。
この格差率は「土地価格比準表」における標準的な地盤と軟弱な地盤との格差と同率です。
また、東日本震災により建物建築が不能となった場合等物理的な要因の個別減価率は
敷地全体に対する割合により0.95~0.55の範囲で決められていますが、
これは復旧に要する追加投資の水準を念頭に置いたもので、この考え方とも平仄を合わせたものです。
参考として、公的評価におけるその他の災害時の減価率は次の通りでした。
<収益還元法>
収益還元法は通常V=a/Rで計算しますが、地盤改良に要する追加投資相当額の償却率が上乗せされ、
または軟弱地盤であることによる不同沈下等のリスクプレミアムが増加するのでこの増加分乃至は
上乗せ分をRpとすると収益価格はV=a/(R+Rp)で計算されます。
Rpの水準は原価法における格差率とのバランス乃至は建物存続期間における追加投資相当額の
償却率から考えると0.1~0.2%程度が妥当でしょう。
こうすることで標準的な還元利回りを5%と想定すると価格に対するインパクトは3%程度となり、
原価法による価格と整合性が取れることになります。