ーーー液状化被害と地価ーーー
地震による液状化は地価にどのように影響を及ぼしたのでしょうか?
また、土地の価格を回復させる要因は何でしょうか?
<公示価格の動き>
下図は平成以来の海沿いと山の手の公示価格の変動をグラフにしたものですが、
これをみると長期的にはどのポイントもほぼ同じような動きをしているようにみえます。
しかし、よくみると「浦安13」についてだけは東日本震災での液状化被害のため、
大きな下落率を示していますが、意外なことに他のポイントは被害が少なかったため、
ほとんど変動はありませんでした。
<地価の回復要因>
大きく被害を受けた浦安市の土地は政府による激甚災害指定により、
インフラ普及や液状化防止対策のための多額の投資がなされたため、
地震後数年で、大きく戻しています。
このように土地価格はそこに投下された社会資本の額に依存することによる
影響度が大きいといえます。
社会資本には以下のように分類されており、国民経済計算によれば社会資本ストックは
2009年で786兆円にも上ります。
国富のうち土地資産額は1200兆円程度ですで、社会資本ストックの水準の高さと
その影響度は容易に理解できます。
これらの社会資本ストックの利便性が評価されて地価という価値に反映される
ことになるわけです。
ただ、この分類は伝統的な統計上のものですので、
現在はこれらに加えてコンビニや光ケーブルといった
民間資本の投資も利便性を高めることになるので、
その整備状況も地価に大きく影響を与えることになります。
<液状化対策要因>
浦安市においては地盤についての大規模な社会資本投資は震災後の
液状化防止対策として行われています。
方法としては下図のように道路と宅地とを一体化して液状化防止策を講ずる
市街地液状化対策事業を行っており、このインフラ投資が地価回復を支えている
と考えてよいでしょう。
ただし、この対策は街区ごと実施しないと効果がないので、街区全体の合意が必要となり、
市内全域について実施できているわけではありません。
したがって、土地を購入する際には液状化対策が実施された街区かどうかを
確認する必要があるでしょう。
(出所:浦安市HP)
<地震よりも怖い要因>
地震よりも大きく地価を動かすことになるファンダメンタルズ要因というものがあります。
ファンダメンタルズというのは株式・為替・金融システムを支えている経済の
基礎的条件で、経済成長率や失業率、国際収支などの指標を指します。
これらが安定していれば問題ないのですが、何らかの要因で動揺すると
システマティックリスクという回避することが困難なリスクが生じ、
そのために地価をはじめとして様々なところに影響が出てきます。
日本でも過去30年の間に2回、この動揺を経験しています。
最初のグラフにある地価公示の動きからみてとれますが、
1回目は90年代初頭のバブル崩壊、2回目は2008年のリーマンショックです。
その際の地価の動きは場所も用途も関係なく同様に影響を受け、
その振幅も東日本大震災のときよりもはるかに大きなものでした。
土地は物理的な要因によって滅失しない限り地価への影響は限定的ですが、
ファンダメンタルズに係るシステマティックリスクのほうが比較にならないくらい
影響が大きいことを示しています。