<地盤をよく知ろう>第2回

地中の地盤についての大体の状況は前回の通りで分かりますが、実際に建築(特に高層建物)をするには

もっと詳細にボーリング調査をして地中の岩盤(礫層)について把握する必要があります。

この調査が不十分ですと、横浜市のマンションのように基礎杭が届かず傾いてしまい、

建て替えをするような事態にもなりかねません。

国ではどのような規制をしているのでしょう。地質・地盤とこれに関連した建物基礎については

次の通り、さまざまな法律や行政指導があります。

≪建物基礎についての主要な規制≫

●建築基準法施行令38条・93条

地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全を確保しなければならず、杭の許容支持力決定に

際しての地盤調査を義務付けたもので、具体的な基準は次の告示によります。

●国土交通省告示1347号(H12)
地盤の長期許容応力度に応じた基礎構造を次のとおり定めています。

 20kN/㎡未満~杭基礎
 20kN/㎡以上30kN/㎡未満~杭基礎・べた基礎
 30kN/㎡以上~杭基礎・べた基礎・布基礎

(1KNは約100Kgです)

●国土交通省告示1113号(H13)

基礎の底部より下2m未満までの間に簡易的な地盤調査のスウェーデン式サウンディング法

による荷重が1kN以下で自沈する層が存在する場合や基礎の底部より下2mから5mまでの間に

その荷重が500N以下で自沈する層が存在する場合にあっては構造計算を行うことを要することにしました。

<スウェーデン式サウンディング法の仕組み>

    (出所) 株式会社CSO技術開発HP

つまり、地中のかなり深いところまで軟らかい砂層がある場合や、地表近くに地下水脈がある場合は建ててから

家が傾かないようになっているかどうかをあらかじめ計算して確認することになったのです。

●品質確保促進法(H12)

基本構造部分の瑕疵担保責任期間を10年間義務化したもので、基礎に起因して住宅が傾いた場合、

住宅の建築・販売業者は修補の責任を負わなければならない、ということが明確にされました。

法律施工後は、建築前に地盤調査をして必要ならば地盤を補強するという対応が一般的になりつつあります。

●瑕疵担保履行法(H21)

瑕疵担保責任期間において賠償資力を確保するため、保険加入を義務付けたものです。

これに対応して保険会社は事故を減らすため、保険契約者に対して設計施工基準での地盤調査を義務付けています。
言い換えると、この法律により、一般の戸建住宅においても地盤調査を行うことが必須となったともいえます。

≪地盤・地質を巡る紛争≫
地質・地盤を巡る係争は数多くあり、この5年間を見ても下記のような判例があります。

判例では消費者保護の観点から宅建業者に対しては

地質地盤の専門家ではないものの、厳しい注意義務を課す傾向にあります。

液状化については予見不能であったということで

天変地異に準じて宅建業者の責任を軽減していますが、その後の東日本大震災による経験値がありますので、

今後は責任追及される可能性があると重まれます。

地震災害以外の一般的な軟弱地盤に起因する結果については地盤調査の調査責任を負わせています。

このような判例の傾向から今後は不動産プレーヤーとしては

地質地盤についてより一層の注意を払って取引に臨むべきであるといえるでしょう。 

 (次回へ)

 
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