たかし君は平成18年11月に自宅として4千万円で購入した新築の鉄骨コンクリートのマンションを
平成28年12月に同額の4千万円で売却しました。
たかし君としては買値=売値なので、確定申告は不要と判断しました。
たかし君が近所の居酒屋でその旨を店の大将に話していたところ、
隣に座って一人で静かに飲んでいた常連客のわたる君から突然
「おいおい、減価償却を考慮したら売却益あるに決まってんじゃないかよ」
と言われてしまいました。
その言葉に少々動揺しかけるたかし君でしたが、酔っ払いの戯言だろうと決めつけたたかし君は
「大将、明日出張で早いから今日はこの辺で帰るわ」
と言って二軒目のバーにそそくさと移動したのでした。
【問題】たかし君が本来取るべき行動は次の3つのうちのどれでしょうか?
(1)わたる君に「人が気持ちよく飲んでるのに気安く話しかけるんじゃねえぞ」とすごむ。
(2)二軒目のバーのマスターに「4千万円-4千万円=ゼロなのに。これだから算数のできないオッサンは困る」と微笑みながら語りかける。
(3)知人を介してLR会計の山田税理士に質問する。
というわけで前置きが長くなりましたが、こんにちは、LR会計の山田です。
昨年マイホームを売却したんだけど、確定申告ってしないとダメなんですかね?
という質問が増えてまいりました。
その時に例として挙げるのが、売値と買値が同額のケースです。
心情としては「4千万円で買ったものを4千万円で売ったんだから儲けなんて1円もないぞ!」
と言いたくなる気持ちは分かります。
しかし、上記のたかし君ですと、10年住んでいるのですからね。
その間の家賃相当分を考慮すると、売値が買値と同額ってとてもラッキーな話なんです。
というわけで、税法では、売値と買値が同額でも売却益が出る仕組みとして
減価償却が設けられております。
というわけで、以下、解説編です。
正解は(3)です。
【解説】
たかし君が買った4千万円の内訳は建物2千万円、土地2千万円でした。
この時、自宅マンションの10年分の減価償却費は
2千万円×0.9×0.015×10年=270万円
10年経過したマンションの取得費は
4千万円-270万円=3,730万円
自宅マンションの譲渡益は
4千万円-3,730万円=270万円
となります。
従って、たかし君は自宅マンションの売却によって譲渡益が270万円生じていたのでした。
ようやく、たかし君は所得税の確定申告をする必要があることに気が付くのでした。
たかし君は今度わたる君に会ったら一杯おごろうと決めたのでした。