私が学生時代に住んでいたアパートは、木造、6畳和室、和式トイレ、ガス湯沸かしのお風呂と古いタイプの設備が当たり前で、それでも春先には新しい入居者が入ってきていました。それに対して最近のアパートはおしゃれになりましたね。高級住宅のような外観、マンションと同じように建物入口にオートロックのドアがついています。内装もキッチンにIHコンロ、トイレは温水洗浄便座、お風呂は自動給湯器に浴室乾燥と設備も充実し、部屋のデザインも若者向けに洗練されています。
また、これまでは空いた土地を遊ばせずに、建物を建てたらアパートだったというような物件が多かったのですが、近年、広い土地に複数棟のアパートを建てて、それを区画販売している物件も見かけるようになりました。そういう物件は区画全体で街並みを作るようにアパートを建築しているので、境界を示す植込みや塀をなくしていることが特徴で開放感があります。
こういう物件は、デザイン性が高く、人気が出て入居がつきやすいためアパート経営という面で利益が得られやすいと思います。不動産投資用の物件としては売りやすく、買い手も欲しくなりやすい部類に入ります。すべてがうまくいくタイプのようですが、果たして何の問題もなく購入できるのでしょうか?
今回は、区画売りされた投資用物件の売買で、売り手買い手ともに気を付けることをお話しします。
私が売却を担当したお客様の中にも、こういう物件をお持ちの方がいらっしゃいました。売却を依頼され、物件を見てまず「すぐに買い手はつきそうな良い物件だ」とは思い、希望価格を調整して情報を公開しました。同時に、物件の概要や重要事項説明書のための情報収集を行っていたのですが、ここで思わぬ事態になりました。区画売りされた物件であるため、境界が不明確になっていました。また、複数のアパートでゴミの収集所を共有して作ったため境界の上を通っているため越境物となっていました。さらに公道に面していない物件だったため共有の私道が存在し、引き継ぐ権利関係が複雑になっていました。管理会社が一括して区画全体を管理していたので、協力を得て何とか買い手の方にも納得してもらいながら制約しました。
売主のお客様が自分で整理できていれば問題ないことだったのですが、こういう区画売りの盲点で境界や越境物に関してあいまいになっており、本人も良く分かっていないままアパートを購入して管理を任せていました。もし、他のアパートオーナーと権利関係でもめていたら、すんなりと売却とはいかなかったかもしれません。
買い手にとってみれば、越境や境界が不明確になることで購入後の争いを予測して、そういう物件は避けられてしまいます。売却を決める前に、売主側のオーナーさんも一度確認しておくと良いでしょう。