投資用不動産と言えば、住居用であればアパートやマンション、事業用であればビル、店舗となります。新規で入居を希望する方々は、物件への希望条件を色々ともって探しています。賃貸の営業をしている友人の話を聞くと、お客さんの希望は千差万別だなと思います。ただ多岐に分かれても、共通して希望が出やすい条件が「駅(公共交通機関)から近い」ことだそうです。
当然こういう実態から、投資用物件を探す人は、そういった賃貸の入居希望が多い物件を希望するため、「駅から近い」物件を購入したいと思うようになりますね。現実的に、駅から近い物件は競争率が高いです。
逆を言えば、こういう条件に合う物件を持っているオーナーさんは、売り手の都合が通りやすいということになります。売却希望がない時から、売却依頼が不動産業者から持ちかけられる場合もあります。借り手にも買い手にも人気物件、理想的な不動産だと言えます。
今回は、そういう人気物件を売却する場合など、問合せが多く買付も複数入った場合の購入者の選定方法について、お話しします。
売却希望が通れば、誰でも良いのではと思うかもしれません。しかし、買い手は買付だけで契約ができるとは思っていませんし、とにかく一番手を取るために申し込みをする場合もあります。銀行の融資がおりるのか、手付金をちゃんともらえるのか良く買い手希望者を観察しておかないといけません。買い手を絞ったは良いけど、最後の最後に融資がおりないため契約ができないとか、契約直前に価格を交渉されてしまうこともあります。それでは、売主のオーナーの希望通り売却できない上に、時間もいたずらに経ってしまい、他の有力な買い手候補を失うことにもなりかねません。
私の在職していた時にも、部下が大どんでん返しをされて、物件売却が不成立になってしまったことがあります。売主のオーナー様が真面目な方で最初に買付が入った方に売却するという方針で、募集を行いました。人気のある地域の物件だったので、広告を出した5日後には買付が入りました。部下より報告を受けたオーナーさんは、この時点で問合せ受付を停止し、2番手以降の買付もお断りとなりました。1番手の買い手も当然購入希望はあり、銀行の融資申し込みを行っているため、意外と早く売買が成立すると聞いていました。しかし、1か月後、買い手の仲介業者より銀行融資がおりないため、キャンセルの通知がきました。部下も買い手の属性はよくよく調べてもらったと言っていたので、おかしいなと思っていたのですが、後日初期費用も融資希望に出しており、その部分が融資されないためキャンセルとなったとのことでした。オーナーさんもこの顛末にショックを受けて、売却自体を保留してしまいました。
買付は、申込であって契約ではありません。売り手側が複数の買付申込を受けることが出来ますし、買い手側も正当な理由をもって断ることが出来ます。断られるリスクがあるのは、売り手にも、買い手にも存在することなのです。そのことを考慮すると、売り手であれば、複数の買付申込を受け付けておくことが売買成立への必要条件となります。
複数の買付を受け付ければ、どこかの時点で選定することになります。でもこのことを良い見方をすれば、売主のオーナーの専権事項ということです。売主側の希望に合った買い手を見つけるためにも、この専権事項という切り札は選びやすい状況になるまで使わないようにすることが大事です。
①買付申込は、複数(と言っても買い手も希望がもてる順番まで)受け付ける。
②1番手は、時間的な優位性を与えても、即契約という条件にはしない。特に買い手の条件が付く場合には、2番手以下の購入条件と比較する。
③2番手、3番手が存在する場合、どういう場合に契約できるのかは売主側の仲介業者と打ち合わせておく。
上記のような姿勢で、買付申込を受け付けると選定する場合に、購入希望者を整理できて順位を決めやすくなります。
私の担当したオーナーは、3人まで受け付けを許可し、銀行融資の確約が取れた順番が一番早かった方に決めるという方法をとっていました。これであれば、最初に買い付けた人が銀行融資の確約も早く取れる可能性が高いし、2番手以降であれば、予め銀行と融資の確約が取れるくらいに購入準備ができている人であると判断できる材料になるからでした。
一概に、このやり方が100%うまくいくというわけではありませんが、売却の際に基準をもっておくという意味では良いことだと思います。