不動産の売却のお仕事に携わり、色々なオーナーさんとお仕事をしてきました。その中で、自分の思った通りに売買契約を進めて、所有物件を売却できたオーナーさんは、事前の売買条件の設定が良かったか、買い手が要望を出さない方だったかと言えるくらいに運が良い方と感じています。
不動産の売却物件と一言でくくっても、全く同じものは存在しません。場所、土地の形状、建物の状態など物件自体の条件が違っていますし、それが売主の事情と複雑に絡んで売買条件が決まっています。こういった物件は、この定価で売りますということはありません。
物件1つ1つが違っているうえに売主の要望などが入るのと同じように、買い手側にもその物件に対しての考えや要望が生まれます。買い手としてはお互いの要望や考えをすり合わせて、売買条件を決めていくことを希望したいものです。いわば、売主の売買条件は交渉のたたき台と考えている買い手も多いですね。
売主がこのような買い手とは交渉をしないという姿勢では、せっかくの売却チャンスを失いかねません。売主としても多少の条件を買主の要望に対応する必要はあると考えた方が、結果良い売却をすることになることもあります。ただ、買い手の要望や交渉になんでも反応していると当初の売却条件からかけ離れていくこともあります。それでは、何のための売却かということになりかねません。
そこで、売却の決断をする際に譲れない条件と交渉の余地がある条件を分けておくと良いでしょう。例えば、私は担当した売主のオーナーさんは、売買価格の値引きはできないという条件を持っていましたが、空室になっている部屋の水周りのリフォーム工事を引渡しまでに行うことを交渉の条件として持っていました。買い手にとってみれば、現状有姿で購入した後の費用負担が減らせるということで値引きと同じ価値を感じてもらえることで売却が成功しました。
また、条件のすり合わせに応じるならば、買い手の方に積極的に物件を見てもらうようにすることが良いでしょう。売主のオーナーさんは重箱の隅をつつかせるのではないかと不安になるかもしれません。しかし、現況を見てもらうほうが、買い手の要望が個別になってくるので、「物件を全体的に見ていないけと、恐らく修繕が必要だから、多めに値引きしてもらう」というリスクが避けれます。
買主がすべてを満足する物件や売買条件にする必要はありません、買い手も100点満点の物件購入ができるとは思っていないのです。売主のオーナーさんも100点満点の物件売却を狙わないようにすれば、良い取引をしたと感じることができると思います。