昨年、学生時代から親しい友人が、本人の念願でもあった戸建住宅を購入しました。以前から、子供が生まれて保育園に入るころには欲しいと言っていたので、計画通り購入出来て良かったなと思いました。
私が不動産会社に勤め、友人は新築と中古物件どちらでも検討していたこともあり、何度か相談をもらいました。しかし、友人の希望を叶えるならハウスメーカーの新築を買うべきと判断し、住宅展示場へ連れていき応援することにしました。
私の会社でも新築の建売住宅を企画し、建築、販売している部署がありました。ただ、当時その部署が紹介出来た物件は、売れ残りということもあり社内での紹介はできないと思ったからです。
他で新築物件を購入した後、友人に自社の手持ち物件を見てもらい、感想を聞きました。
「君には悪いけど、値段を融通してもらっても、この新築物件は買わなかっただろうね。」
素直に答えてくれる友人には感謝ですが、やはり売れ残る原因が存在することが確認できました。今回は、前職の会社で頑張っても頑張っても1年以上売れ残った新築戸建て住宅について、なぜ売れなかったのかお話しします。
私の住んでいる地域は、全国でも珍しい人口の増えている都市です。市内で庭付き戸建住宅を購入するには市境に近い郊外に行かないと土地がない一方で、購入希望者の方は増えています。販売する側としては、建築する土地の確保ができれば、注文住宅でも建売住宅でも購入してもらえる可能性は高いので、近年追い風が吹いている状況です、
前職の不動産会社でも住宅販売の部署では、まず建築できる土地の購入に力を注いでいました。ですから、立地や周辺環境は気に入ってもらえる土地を確保できていたと思います。部署自体、会社が出来た当初から存在しているので、20年のノウハウの蓄積もあって、それなりに実績を上げています。それが、一昨年に建築した6区画の建売住宅のうち、半数が6か月以上売れ残るという事態にはまってしまいました。
建売住宅ですので、建築費用などはすでに前払いしており、完全に赤字の状態です。この物件の販売担当をしていた同僚は、早く買い手がついて欲しいと相当困っていました。今までの経験上から売れると判断していたようですが、よくよく話を聞いていくと、売れない原因が見えてきました。
これまでは4LDKで建築していたが近年の土地や建築費用の高騰で、この企画から少し狭めに3LDKに変更して販売したようです。また家族の増加に応じて部屋の仕切りを変更できる構造にしていたものを、固定された構造にするなど、購入後の変更に対応しにくい物件になったとのことでした。
私の友人もその点が不満だったようで、「家族が増えた場合に部屋が少ない気がするし、広い部屋を仕切りで分けるというような作りでもないよね。」と話していました。また、販売担当も「同じような理由でお客様が断るんだよね」と嘆いていました。
企画し建築した物件を販売するのですから、ある程度、作る側(売る側)の意図が反映されて建築された住宅であることは仕方がないことです。
不動産、特に居住用の戸建て住宅を買うということは、購入者がこの後の人生を「夢」見て買うということです。これくらいのことは、20年も続く部署でわかっていることだと思っていましたが、販売担当は「それでも、他社とは違うこの物件のニーズに合うお客様はいると思う。」と話しました。
購入者が何を求めているのかを想像せずに、見た目や周囲との違いばかりを気にしていたところに落とし穴がありました。長い経験があだとなり、その一手間の邪魔をしてしまいました。今の言葉でいえば「居住者(購入者)ファースト」が大事ということです。