所有している投資物件(賃貸用のアパート、マンション、ビルなど)を売却したいけど、なかなか買い手が見つからないということはありませんか?
現在、2020年の東京オリンピックに向けて不動産市場は東京や一部の地域で過熱気味で、多少高くても投資用物件は売れるという雰囲気です。売却希望を持ったオーナーさんの多くが、仲介を依頼した不動産会社のHPや不動産総合サイトを通じて物件広告を出し、希望条件通りに売却したいと期待をもっています。
そのような中、不動産業界もインターネット環境が充実し、賃貸だけでなく売買の物件情報も速いスピードで公開され、多くの不動産を探す人々の目に触れられようになりました。購入希望の人は物件情報を早く簡単に手に入れるようになり、不動産会社の仲介現場でもお客様の気を引くために、新しく条件の良い物件をお薦めする傾向が強くなっていると思います。
情報開示当初は新着情報のため多くの人が閲覧し問合せも多いのですが、そこで契約できず時間が経つと閲覧も問合せも減っていきます。そして広告が古くなればなるほど、ネット上で「売れない」物件と見られてしまうでしょう。不動産市場は値上がり傾向だし、時間をかけてこの条件で買ってくれる人を待つという考えであれば問題ありません。しかし、投資用物件は個人所有物件の売買のように顧客層の広い市場ではないので、必ず買い手が現れるかどうかに不安が残ります。しばらくしても買付の連絡もなく、物件情報の問合せすらこない状況に陥る場合もあります。そんな時、「この物件は売れないのではないか」と疑心暗鬼になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
売主のオーナーさんは、仲介の不動産会社と売買条件を決めて売却希望物件を公開します。買い手側もその情報を閲覧して検討しますが、希望の購入条件があり、それらが合致しないと売買は当然のことながら成立しません。思うように話が進まない時には、売主のオーナーさんは、売買条件の見直しを検討することになります。
その際、専門知識を持つ仲介の不動産会社に要望を伝えて、見直しはすべて任せる場合が多いようですが、今回は現在の売買価格が市場に適正かどうかを、売主のオーナーさん自身で検討することをお薦めします。
というのも、私が投資用物件の売買を担当していたころに次のような「売れない」物件と出会うことがあったからです。
一昨年の夏ごろより、不動産投資への問い合わせが増え、投資用物件の公開情報チェックと個別の物件探しが日課となりました。
昨年の春ごろに、駅から徒歩5分圏内で5500万円の木造アパートが新規情報で出ていました。築8年で、外観もまだまだ新しく入居者も入っているので、購入希望の顧客に紹介しようと検討していました。家賃収入状況を取り寄せ、満室時の表面利回りを計算したところ、周辺で売りに出ている同等の物件よりも1%以上低いことが判明しました。これではアパート経営の収支が合わないので、値下げ交渉可能かどうかを売主側の不動産会社に尋ねました。しかし、オーナーさんが強気で価格交渉はしないということだったので、顧客への紹介は行いませんでした。その後、同じような周辺物件が売れていく中でこの物件は売れ残り、最近になりようやく値下げをしたようですが、9か月以上経った今でも売却できていないようです。売主のオーナーさんが最初の頃に思い切って価格を見直していれば、違った結果になったかもしれません。
物件の売却希望を出す際に、売主の利益のみを価格に反映してしまい、市場が今どのくらいの利回りで動いているかを考慮せずに売買価格を決めてしまうと起こりうる現象です。どんなに魅力的な物件であっても、収益性が低いと購入後の不動産経営が成り立ちません。それでは買い手も購入したいと思いませんし、銀行融資を受けて買おうとしている場合には、銀行からの評価が得られずに融資を受けられないため、購入できないということもあるようです。
仲介の不動産会社に調べてもらうこともできますが、売却希望の出ている物件の表面利回りをネットを使って調査することで、所有する物件の建っている地域が今どれくらいの利回りで取引されているのかがわかります。それを理解したうえで売買価格を見直すと、売却もスムーズに進めることができるでしょう。
※表面利回り(%)は次のように計算します。
表面利回り(%)=年間家賃収入÷売買価格×100
因みに、購入を検討する人は、1年間満室の場合で計算する「満室想定利回り」と、現状の空室が1年間続いた場合で計算する「現状想定利回り」の2つの利回りを検討することが多いです。
ただ「不動産投資が過熱気味で売れるだろう」として検討するのではなく、このような視点から所有する物件が売り時なのかどうかは、実際に調べて判断されることをお薦めします。売主にも買い手にも利益の残る売買であれば、お互いによい取引だったと言えますよね。