皆さん、こんにちは。司法書士の豊田です。
今回は、私が国際相続を中心に手掛けていくきっかけとなった案件をご紹介します。
【受任まで】
平成23年のある夏の日、都内のマンションで、一人暮らしのおばあちゃんが亡くなっているのを、様子を見に来た甥御さんが発見しました。
甥御さんの話では、そのおばあちゃんには、娘さんが1人おり、随分昔にアメリカ人と結婚してアメリカに住んでいるはずなので、アメリカの住所に宛てて、何度か手紙を書いてみたそうですが、どうしても連絡がつかない、とのことでした。
そして、ある弁護士さんを経由して、私に相談来て、一度お会いすることになりました。
話を伺うと、そのおばあちゃんには都内のマンション、その他、かなりの預貯金や株式があった様子なのですが、詳細がわからず、また、甥御さんもマンションの管理に困っていました。
かなりお困りの様子を見て、「じゃあ、やってみるか!」とばかりに(その時は)後先考えず、受任することにしました。
まず、受任してみて一番困ったのは、現在の相続関係がわからないことです。
娘さんの戸籍を見ても、40年以上前にアメリカ人と結婚して、アメリカに帰化しているため、その後の生死含めた相続関係は出てきません。
生きていれば、まだ、アメリカに住んでいるはずなのですが、甥御さんからお聞きした住所に、私から改めて手紙を送ってみても「宛所に見当たらず」で返ってきます。ある時は「宛先人死亡」とのメモが書かれて返ってきました。
【全米3億人から相続人を探し出す??】
さらにアメリカ国内の人探しサイトや新聞記事などで調査した住所にも手紙を送ってみましたが、やはり「宛所に見当たらず」でした。
そのようにして手がかりがつかめないまま半年が過ぎ、「さすがに3億人もいる中から相続人を探し出すなんて無理か。別の方法を考えるしかないかな。」と思い始め、改めて甥御さんの話を聞くと、どうやら娘さんは、芸術家で、約18年前に銀座で個展を開いた際に一時帰国して以来、音信が途絶えている、とのことでした。
【失踪宣告!】
「そうか、その手があったか!」と気が付き、甥御さんを申立人として、家裁に失踪宣告の申立をしてもらうことになりました。
ところが、一応、要件は満たしているものの、甥御さんが家裁の書記官との最初の面談で言われたのは、「アメリカのようなちゃんとした国であれば、生死に関する何らかの証明が取れないことはないんじゃないですか?」ということでした。
さらに、「もし、死亡証明書が取れないようでしたら、また、状況をお聞かせ頂いた上での判断となりますが、取得できるものは取得の努力をしてみてください。」とのことでした。
そう言われても、当時は開業したばかりで、アメリカの死亡証明書などをどのように取得するのかなど、想像もつきませんでしたが、たまたま、知人と飲んでいる時に「日本人からの移民については、乗船記録、上陸記録から、帰化情報まで、かなり詳細な記録が残っている。」らしいことを知り、そこからたどれば死亡証明も取得可能ではないか、と考えました。
そして、記録を取得できる専門業者を探し当て、ついに、娘さんの死亡証明書を入手することができました。(それにより、家裁への失踪宣告は取り下げることになりましたが。)
手元に届いた死亡証明書を見たところ、申告者の欄に、やはり同じお孫さんの名前とその住所が記載されていましたので、「これで行けるだろう。」と手紙を送ったのですが、やはり「宛所に見当たらず」でした。
【遺言謄本】
そのことを専門業者に話したところ、「アメリカでは相続手続きが複雑なので、多くの人が遺言登記所に遺言を残している。それを取得すれば、何かがわかるかもしれない。」とのアドバイスがあり、今度は、娘さんの「遺言謄本」を請求してもらったところ、確かに遺言が残っており、その謄本に記載されていたお孫さんの住所に、再度、手紙を送ってみたところ、またしても、宛所に見当たらず、でした。
「何か良い知恵はないものか?」と遺言謄本(170ページくらいありました。)をめくっていたところ、一つのアイデアを思いつきました!
(次回に続く)