「ストック活用」政策がとられ、少しずつ流通量は増えているが、いまだに新築が圧倒的に多い昨今。
その理由は何ナノでしょう?
また、今後の中古流通の見通しはどうか、ちょっと探ってみましょう。
なぜ中古住宅の流通は進まないのか?
皆さん承知のように、空き家問題や少子高齢化の問題は年を追うごとに顕在化しています。
その中で中古住宅の流通は未だに浸透しにくい状況です。
確かに、昔に比べると中古住宅の購入者は増加していますが、飛躍的に伸びているわけではありません。
そこには、色々な問題がからんでいるからといっても過言ではないでしょう。
そこで、中古住宅の流通を阻んでいる主な要因を探ってみましょう。
・国の政策上の問題
国としては、景気対策として経済波及効果が大きい住宅産業を推進します。
1つの住宅建設で建材や住宅設備をはじめ、そこに携わる労働力など、各産業界に影響を及ぼすので国は手っ取り早い住宅政策を推進します。
例えば、住宅ローン減税をはじめとする新築促進策は例年のように行われています。
加えて、家やアパート、マンションが建っていれば、土地や建物の固定資産税や相続税などの税制が優遇される、という税制上の問題もあります。
こうした背景から、麻薬のような新築優遇策を取っていたため、中古住宅が流通しにくいという現状が伺えます。
・不動産業界の物件囲い込み
中古住宅の売買には情報公開が非常に重要ですが、不動産会社の仲介手数料の問題が存在します。
各不動産会社はいわゆる両手仲介をもくろむために、情報を他社には出さず自社で売り手と買い手を見つけるという手法をとります。
そうすることで、売り手と買い手の双方から仲介手数料を得ることが可能になり儲けが倍になるわけです。
ただ、こうした商慣習は芳しくないとして囲い込みを是正するような動きが出ています。
・金融機関の担保評価が低い
いざ中古住宅の購入をとなれば、住宅ローンは欠かせません。
しかしながら、中古住宅では金融機関の評価には厳しいものがあります。
そのため、新築では売買金額の100%の融資ができても、中古住宅では売買金額の7割とか8割というように、売買金額の100%の融資は難しいものです。
ある意味、いくらマイナス金利政策で銀行がお金を貸したがるようになりましたが、まだまだ、金融機関はそれだけ中古住宅には価値がないと判断していると言っても過言ではありません。
ただ、金融機関には、万一、ローン返済が不能になった際に物件を売却してでも融資金を回収する使命がある以上、仕方がないという点は考慮しなくてはなりません。
・買い手側の不安を払拭できない
中古住宅を購入するとなれば、その住宅の質の良し悪しが判別できず質に対する不安が大きいものです。
また、建物検査という習慣も今までないので担保するものがないのが現状です。
したがって、それほど不安材料があるのなら新築をという流れはなかなか排除できません。
最近では、建物検査をするインスぺクションの活用で中古住宅の流通促進をという政策も発信しましたので、今後は市況が変化すると想定されます。
新築神話は崩れにくい?
先ほども記しましたが、新築神話が崩れないのは国の政策上の問題が大きく、景気の下支えのためにその促進が図られていました。
しかしながら、住宅ストックと世帯数の乖離が進みはじめ空き家問題が増加しました。
そのため、住宅ストック活用をするには?という問いから、健全な中古住宅 市場が必要となったわけです。
その割には、いまだに新築神話は崩れていません。
マンションデべなどは新築の販売を継続していかないと、企業の存続ができないという体質も手伝って新築は減らないという現実があります。
今後の中古住宅の流通の見通しは?
最近の発表で国交省は中古住宅市場活性化・空き家活用促進・住み替え円滑化に向けた取組を発表しています。
その中で中古住宅流通の取組に次のようなものを挙げています。
・中古住宅の建物評価手法の改善
・的確なリフォームの推進
・望ましい中古住宅取引モデルへの転換
・不動産総合データベースの整備
以上のような施策を挙げて、今後の中古住宅の流通を活性化して行こうというものです。
この施策には中古住宅の流通の阻害要因を排除していくという意向が見えてきます。
宅建業法の改正やレインズの利用法のルール化など、法律や制度を変えてまで中古住宅の流通を推進していくという国の方針が盛り込まれていますね。
より質の高い中古住宅を安心して購入できるような時代はもう間もなく来ることでしょう。
<参考資料>
国土交通省:中古住宅市場活性化・空き家活用促進・住み替え円滑化に向けた取組