億ション価格でも買うワンルームマンション
以前の日経新聞朝刊に不動産市場の記事が掲載されている。
その中には昨今の不動産投資に関する記事もちらほら。
若い世代が老後の生活に不安があり、そのためにワンルームを購入している様子が描かれている。
ここで、現実を考えてみよう。
たとえば、30歳代でも定年を65歳とした場合、35年後の生活費にワンルームの賃料が充当できるのだろうか?
購入した時期は当然、新築であるから入居者も高い賃料を払ってでも入居してもらえる。
しかしながら、35年後のマンションはどうなっているのか?だれもわからない。
それを、あたかも現実味があるように不動産業者はマンションを販売する。
「今はローン返済が賃料を上回っていても、30年後には家賃が丸々収入になって年金替わりになりますよ」とセールスの常套句が聞こえてくる。
購入当初からローン返済額の方が賃料よりも多く、しかも固定資産税や管理費などの固定費を加算した収支は年間で数十万円の赤字という物件を買わされている。
そんな収支の物件を30年も所有していれば、累積赤字は相当な金額になる。
加えて、ローン金利の上昇や入居者の入れ替えに伴う修繕費用の負担などが加われば、投資案件としては非常に厳しいものになる。
人口減少と空室の増加
ようやく定年を迎える35年後の頃には、日本の人口の動態も今とは変わっているはずだ。
2010年の国勢調査では60歳以上の単身高齢者が約30万人、20年後にこの30万人の方が亡くなられてしまうと空室は加速する。
また、労働人口も減少していく方向からして、高額の賃料が払える入居者は確実に減少していく。
こうした背景を鑑みると、せっかく若い世代の時に買ったワンルームマンションも35年後には入居者も入らない、入っても安い賃料でしか入居者がいないという環境が見えてくる。
そうなると、年金代わりの収入を得る道具はまったく役に立たない。
当然、マンションを維持するために補修のコストが年々かかり、下手するとマイナスの財産、いわゆる負動産になりかねないわけだ。
そうした兆候は徐々に出始めている。
アットホームが8月末に公表した首都圏の賃貸住宅の成約率は前年比で8.4%減、5カ月連続しての減少が続いている。
中でも新築のワンルームは18.5%減だ。
都内の新築マンションで半年以上も満室にならない物件も出始めている。
1K、駅徒歩10分以内、26㎡という内容でも満室にならない。
相続税対策などで賃貸住宅を建築する、あるいは購入する人が多くなり、需要を超える数の物件が供給されているというが理解できるだろう。
今年、6月に公表された不動産市場調査会社のタスの資料によれば、都23区内の賃貸住宅の空室率は33.68%にもなっている。
現状でもこうした背景から、年々賃貸の市況はオーナー側にとっては厳しい環境になっていることがうかがえる。
それでも、億ション価格のワンルームを買うのか、はなはだ疑問である。
不動産市況はバブル期のような気配だが、現実は厳しいということを肝に銘じるべきだろう。
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